目次
新しいモデルは賢いが高い——ふつうはそう考えます。ところが GPT-6 Astra と GPT-5.6 Sol の場合、単価の比較だけでは答えが出ません。Astra は同じ仕事をより少ないトークンで終わらせるからです。
結論から書きます。第三者機関 Artificial Analysis の実測では、Astra を最も弱い low で動かすと、Sol を high で動かしたときと1タスクあたりの費用がほぼ同じ($0.82 対 $0.81)になり、点数は上(46 対 42)でした。使う出力トークンは3分の1、返事が始まるまでの待ち時間は4分の1です。
ただし、この「ほぼ同じ」は期限つきの前提の上に成り立っています。Sol はいま販促価格で、告知どおりなら2026年11月下旬に終わり、値が戻りうるからです。この記事では、2026年9月18日時点の Artificial Analysis の実測値と OpenAI の公式情報をもとに、強度別の費用・トークン・速度、前提が変わったときの試算、コーディングでの違いまでを整理します。
Astra(low)と Sol(high)を同じ物差しで測ると
Artificial Analysis Intelligence Index・1タスクあたり(2026年9月18日時点)
費用
$0.82 対 $0.81
ほぼ互角。単価は2.5倍なのに、総額で並ぶ
出力トークン
4千 対 1万3千
Astra は約3分の1で答えにたどり着く
返事が始まるまで
2.7秒 対 11.9秒
考え込む時間が短い。体感差はここに出る
知能指数
46 対 42
弱い設定の Astra が、強い設定の Sol を上回る
出典: Artificial Analysis「GPT-6 Astra (low) vs GPT-5.6 Sol (high)」。費用は Sol の販促価格($4/$20)で計算されている
1. 論点:単価は2.5倍、トークンは3分の1
比較を単価だけで済ませると、Astra は明らかに高いモデルです。
| モデル | 入力(100万トークン) | キャッシュ読み取り | 出力(100万トークン) |
|---|---|---|---|
| GPT-6 Astra | $10.00 | $1.00 | $50.00 |
| GPT-5.6 Sol(販促価格・2026年8月21日から3か月) | $4.00 | $0.40 | $20.00 |
| GPT-5.6 Sol(販促前の価格) | $5.00 | $0.50 | $30.00 |
出典: OpenAI 開発者ドキュメント「GPT-6 Astra」、OpenAI 開発者コミュニティの値下げ告知(2026年8月21日)
販促価格で比べると、Astra の単価は入力で2.5倍、出力でも2.5倍です。ここだけ見れば「高くて使えない」で終わります。
ところが、料金は「単価 × 使ったトークン数」で決まります。推論するモデルは、答えを出す前に考えます。その思考も出力トークンとして課金されるので、少ない思考で正解にたどり着くモデルは、単価が高くても総額で安くなりうる——これがこの記事の論点です。
2. 「lowで足りる」は誰が言ったのか
発端は「Astra の low は Sol の high より良い」という言明でした。出どころを確かめます。
出どころは、OpenAI の担当者(Tibo 氏)が2026年9月6日に X(旧Twitter)へ投稿したものです。OpenAI 開発者コミュニティでも、OpenAI 側の投稿者が「GPT-6-Astra を推論 low にしたものを GPT-5.6-Sol の高強度の置き換えとして扱うのが OpenAI の助言だ」と書いています。
🟡 ただし、これは投稿での案内であって、仕様として保証されたものではありません。OpenAI の開発者ドキュメントには、強度どうしの比較も、トークン効率についての記述もありません(筆者が確認)。書かれているのは強度が5段階(low / medium / high / xhigh / max)あることと、価格や制限だけです。目安として受け取り、自分の仕事で確かめてください。
つまり「lowで足りる」を裏づけるには、独立した実測が要ります。
3. 強度別の実測値
Artificial Analysis は、複数のベンチマークをまとめた Intelligence Index を強度ごとに回し、1タスクあたりの費用と出力トークン数まで公表しています。2026年9月18日時点の数字を並べます。
| モデル・強度 | 知能指数 | 1タスクの費用 | 出力トークン | 最初の1文字まで | 生成速度 |
|---|---|---|---|---|---|
| Astra low | 46 | $0.82 | 4,000 | 2.74秒 | 49 tok/秒 |
| Astra medium | 50 | $1.54 | 10,000 | 4.46秒 | 46 tok/秒 |
| Astra high | 51 | $1.72 | 12,000 | 47.76秒 | 46 tok/秒 |
| Astra xhigh | 53 | $2.31 | 17,000 | 154.86秒 | 49 tok/秒 |
| Astra max | 53 | $3.26 | 27,000 | 300.45秒 | 52.6 tok/秒 |
| Sol medium | 39 | $0.50 | 8,000 | 4.74秒 | 60 tok/秒 |
| Sol high | 42 | $0.81 | 13,000 | 11.91秒 | 60 tok/秒 |
| Sol xhigh | 44 | $1.18 | 20,000 | 40.15秒 | 66 tok/秒 |
| Sol max | 47 | $1.99 | — | 129.63秒 | 61.7 tok/秒 |
出典: Artificial Analysis のモデル比較ページ(low 対 high、medium 対 high、high 対 high、xhigh 対 xhigh、low 対 medium)とSol のモデルページ。費用は Sol の販促価格で計算されている。出力トークンは千単位に丸めた表示値で、回答ぶんと推論ぶんの合計。Sol max の出力トークンは、グラフ上の値を確定できなかったので省略した
読み取れることは3つです。
- Astra の low は、Sol の high とも xhigh とも競り勝ちます。Sol high(42点・$0.81)とほぼ同額で4点高く、Sol xhigh(44点・$1.18)より2点高いのに3割安く済みます。ただしSol medium(39点・$0.50)より安いわけではありません——7点ぶんの差に $0.32 を払う価値があるか、という比較になります
- Astra は強度を上げると急に高くなります。medium で $1.54(Sol high の約1.9倍)、max では $3.26(約4倍)。点数の伸びは 46→53 の7点にとどまります
- Sol が Astra の low を点数で上回るのは max だけです。その47点に対して、費用は $1.99 と2.4倍かかります
4. なぜ同じ値段になるのか
単価が2.5倍なのに総額が並ぶ理由は、使うトークンが3分の1だからです。ごく単純な掛け算で確かめられます。
| 内訳 | Astra low | Sol high |
|---|---|---|
| 出力トークン(1タスク) | 4,000 | 13,000 |
| 出力の単価(100万トークン) | $50.00 | $20.00 |
| 出力ぶんの費用(表示値から計算) | 約 $0.20 | 約 $0.26 |
| 1タスクの総額(入力・キャッシュ込み) | $0.82 | $0.81 |
出典: 出力ぶんの費用は、上表のトークン数と公式単価から筆者が計算(4,000 × $50 ÷ 100万 = $0.20)。トークン数は千単位の丸めなので、この計算も概数。Artificial Analysis は費用を回答・推論・キャッシュ・入力の種類別に分けたグラフも出しているが、読み取れる値に幅があったため、ここでは総額と表示値で比べている。総額は Artificial Analysis の公表値
出力だけを見ると、単価が2.5倍でも支払いは Astra の方が少ない($0.20 対 $0.26)という逆転が起きています。総額でほぼ並ぶのは、残りの入力・キャッシュぶんで Astra の高い単価が効いてくるためです。
ここから実務的な目安が出ます。入力が短く、考える量が支配的な仕事ほど Astra の low が有利になり、毎回大量の文脈を読ませる仕事ほど不利になります。コンテキストの扱いについてはAIのコンテキストとは——1Mトークン時代の「読めるけど読めない」現実で扱っています。
5. 速度:待ち時間が4分の1になる
費用が互角なら、次は速さです。1トークンあたりの生成速度は Sol の方が速い(60 対 49 tok/秒)のに、実際に答えが返り終わるまでの時間は Astra low の方が短くなります。理由は、考える時間(最初の1文字までの待ち)と、吐き出すトークン数の差です。
| モデル・強度 | 最初の1文字まで | 生成にかかる時間(実測) | 合計 |
|---|---|---|---|
| Astra low | 2.74秒 | 91.69秒 | 約94秒 |
| Astra medium | 4.46秒 | 209.95秒 | 約214秒 |
| Sol high | 11.91秒 | 219.90秒 | 約232秒 |
| Sol xhigh | 40.15秒 | 296.86秒 | 約337秒 |
| Astra max | 300.45秒 | 522.00秒 | 約822秒 |
出典: Artificial Analysis の実測値(最初の1文字までの時間と、1タスクあたりの生成時間)。合計は筆者が足したもの。生成時間の指標は「最初の1文字までの待ち」を含まない定義なので単純に足せる。ただし待ち時間と速度は500トークンを出させる別の測定、生成時間は指数のタスク平均で、測定の出どころが違う点に注意
Astra low は Sol high の約2.5分の1の時間で終わります。逆に max まで上げると、最初の1文字が出るまでに5分待つことになります(300.45秒)。対話で使うなら、この待ち時間の差は費用より体感に効きます。
6. 前提が変わる日——Solの販促価格
ここまでの「ほぼ同額」は、Sol の販促価格で成り立っています。OpenAI は2026年8月21日に「今後3か月、GPT-5.6 Sol の API とクレジットの価格を20%以上下げる」と告知しました(入力 $5→$4、キャッシュ $0.50→$0.40、出力 $30→$20。ChatGPT Work と Codex のクレジットにも適用)。告知どおりなら、2026年11月下旬までの期間限定です。
🟡 終了日を名指しした記述と、終了後の価格は、OpenAI からは出ていません。同じスレッドでは利用者が「少なくとも2026年11月21日まで」「Terra と Luna の値下げ(Terra $2.50→$2.00 / $15→$12、Luna $1.00→$0.20 / $6.00→$1.20、2026年7月30日実施)は恒久」と書いていますが、これは OpenAI の告知ではなく、利用者の投稿です。
元の $5/$30 に戻ると仮定すると、入力とキャッシュは1.25倍、出力は1.5倍になります。Sol high の1タスク($0.81)のうち出力ぶんは約 $0.26 なので、残りが1.25倍・出力が1.5倍で約 $1.08。すべてが入力寄り・出力寄りという両極端を取れば $1.01〜$1.22 の幅に収まります。いずれにしても Astra low($0.82)の方が2〜3割安くなります。
いま(販促中)
費用は互角
Astra low $0.82 / Sol high $0.81。点数と速度のぶん Astra low が有利です。
販促が終わったあと(元の価格に戻った場合)
Astra low が2〜3割安い
Sol high は約 $1.08(幅を取れば $1.01〜$1.22)に上がります。Astra low は $0.82 のままです。
判断
いま乗り換えても損はしにくい
価格が動く方向は Astra に有利です。ただし自分の仕事で測ってから決めてください。
7. コーディングでは差が縮まる
ここまでは知能指数(総合)の話です。コーディングのエージェント作業を測った指数では、値段の差が縮まります。
総合の指数では、最大強度どうしで Astra($3.26)が Sol($1.99)より約6割高いのに対し、コーディングのエージェント指数では Astra が1タスク $7.09 で、Sol より約15%高いだけです。点数は 62 対 55 で Astra が7点上、トークンは3分の1。コーディングは、Astra にとって相対的に分のいい土俵だと言えます。
ただし🟡 コーディングの指数では、低い強度での費用が公表されていません。この記事の主題である「low で足りるか」は、コーディングでは確かめられていません。総合指数で言える「弱い強度で足りるなら得、最大まで上げると割高」を目安に、自分のエージェントで測ってください。
出典: Artificial Analysis「Benchmarking GPT-6 Astra」(Coding Agent Index、max 強度での比較。2026年9月9日公表)
なお、Astra には料金が跳ねる条件がもう2つあります。入力が272,000トークンを超えると、入力とキャッシュが2倍・出力が1.5倍になります。逆に Batch と Flex は半額、Fast は2倍です。長い資料を毎回丸ごと渡す使い方では、この割増しが効きます。
8. 自分の仕事で測る
ここまでの数字はベンチマークの詰め合わせで測ったものです。あなたの仕事とは中身が違います。判断は自分の代表的な仕事で測ってから下してください。手順は3つです。
- 同じ依頼を2つの設定で流す:Astra を
low、Sol をhighにして、同じ入力を5〜10件ずつ投げます。1件だけだと、たまたま長く考えた回に引きずられます - 請求ではなく応答の数字を見る:応答に含まれるトークン数(入力・出力・推論)を記録します。単価を掛ければ1件あたりの費用が出ます。API の料金の基本はAI APIとは何か——初心者がまず知るべき料金・トークン・モデル選びにまとめています
- やり直しの回数も数える:安いモデルが1回で終わらず2回投げ直しているなら、実際の費用は2倍です。費用は「1回の値段」ではなく「仕事が終わるまでの合計」で比べます
FAQ
Q1. Astra の low と Sol の low は同じ強さですか。
違います。強度の名前はモデルごとの設定値で、共通の尺度ではありません。実測でも Astra low(46点)は Sol の上から2番目の xhigh(44点)を上回っています。名前ではなく点数と費用で比べてください。
Q2. どの強度から試すべきですか。
low から上げていくのが無難です。Astra は強度を上げると費用の伸びが急で、medium で Sol high の約1.9倍、max で約4倍になります。点数の伸びは 46→53 の7点なので、上げるほど割に合いにくくなります。
Q3. 販促価格が終わったら乗り換えるべきですか。
価格が動く方向は Astra に有利です。元の $5/$30 に戻るなら、Sol high は $1.01〜$1.22 になり、Astra low($0.82)の方が2〜3割安くなります。ただし🟡 終了後の価格は公表されていません。
Q4. トークンが3分の1なら、上限のあるプランでも有利ですか。
API の従量課金ではそのとおりですが、サブスクリプションの利用上限がトークン数に比例して減るとは公表されていません。プラン側の扱いは料金の話とは別に確かめてください。
Q5. 数字はいつの時点のものですか。
本文の実測値は2026年9月18日時点で Artificial Analysis が公表していたものです。価格も強度ごとの成績も更新されるので、判断の前に出典のページで最新の値を確かめてください。
出典
- Artificial Analysis — GPT-6 Astra (low) vs GPT-5.6 Sol (high)(費用・トークン・速度・待ち時間)
- 同 — Astra (medium) vs Sol (high)、Astra (high) vs Sol (high)、Astra (xhigh) vs Sol (xhigh)、Astra (low) vs Sol (medium)
- Artificial Analysis — GPT-5.6 Sol(max の費用・速度)
- Artificial Analysis「Benchmarking GPT-6 Astra」(Coding Agent Index、強度ごとの費用の並び)
- OpenAI 開発者ドキュメント — GPT-6 Astra(単価・強度5段階・272Kの割増・Batch/Flex/Fast・コンテキスト)
- OpenAI 開発者コミュニティ — GPT-5.6 Sol の20%値下げ告知(2026年8月21日)(販促価格と期限、Terra・Luna の恒久値下げ)
- OpenAI 開発者コミュニティ — Astra の low/medium を Sol high の置き換えに(担当者の発言として紹介されている推奨)
関連記事
- GPT-6 Astra リリース完全解説——何が変わったか、使えるプラン
- GPT-5.6 リリース完全解説(Luna/Terra/Sol)——3モデルの位置づけ
- Claude Opus 5リリース——もう一方の選択肢
- AI APIとは何か——料金とトークンの基本
- AIのコンテキストとは——入力が長いほど効く費用