2026年7月9日、OpenAIが新モデルファミリー 「GPT-5.6」 を一般提供開始しました(OpenAI公式発表、6月26日の限定プレビューを経ての正式公開)。最大の特徴は、従来の「無印+Pro」という2段構成をやめ、Luna(高速・低コスト)/ Terra(バランス)/ Sol(フラッグシップ)という3モデル体制に切り替えたことです。

フラッグシップのSolは、コーディングエージェント性能の指標である Artificial Analysis Coding Agent Index で80 を記録しトップに立ち、長時間の実務ワークフローを測る Agents' Last Exam でも53.6 とClaude Fable 5(40.5)を13.1ポイント引き離しました(Vellum集計)。一方で、実プロダクション級コーディングの SWE-Bench Pro では Claude Fable 5 が80.0%、Sol は64.6% と、Claudeに明確に負けている領域も残ります。

この記事では、OpenAI公式発表・複数の独立ベンチマークレポートを基に、GPT-5.6の3モデルの違い・価格・ベンチマーク・新機能・ChatGPTプラン別提供・Claudeとの比較・用途別選び方までを、確定情報ベースで解説します。

GPT

GPT-5.6 リリース

2026年7月9日 一般提供開始 / 3モデル体制

Luna
高速・低コスト
$1 / $6 per 1M tokens
Terra
バランス(実務の主役)
$2.50 / $15 per 1M tokens
Sol
フラッグシップ(最高性能)
$5 / $30 per 1M tokens

1. リリース概要——日付・提供範囲・スペック一覧

項目内容
ファミリー名GPT-5.6
一般提供開始2026年7月9日(限定プレビューは6月26日)
開発元OpenAI
前世代GPT-5.5
モデル構成Luna(高速・低コスト)/ Terra(バランス)/ Sol(フラッグシップ)の3モデル
コンテキストウィンドウ約100万トークン(1,050,000)※3モデル共通
最大出力128,000トークン
知識カットオフ2026年2月16日
API価格(Sol)$5(入力)/ $30(出力)per 1M tokens
API価格(Terra)$2.50(入力)/ $15(出力)per 1M tokens
API価格(Luna)$1(入力)/ $6(出力)per 1M tokens
推論effortnone / low / medium / high / xhigh / max の6段階
提供チャネルChatGPT / ChatGPT Work / Codex / OpenAI API
同時発表ChatGPT Work(業務エージェント)、Codex同梱の新デスクトップアプリ、音声モデル GPT-Live

ポイントは、3モデルすべてが同じ約100万トークンのコンテキストと128Kの最大出力を共有している点です。違いは「賢さ」「速さ」「価格」であり、扱えるドキュメント量は変わりません。用途とコストで縦に選び分ける設計になっています。

2. Luna / Terra / Sol——3モデルの違いと選び方

GPT-5.6の一番の変化は「2段(無印/Pro)→3段」への再編です。それぞれの立ち位置を整理します。

Luna
高速・低コスト

最も安く速いモデル。単純な分類・要約・チャット・大量バッチ処理に最適。DeepSWE評価では「API 1ドルあたり24ベンチマークポイント」というコスパを叩き出し、Claude Fable 5の3.2を大きく上回るとされます。

向く用途:高頻度・低単価タスク、社内ツール

Terra
バランス(実務の主役)

前世代GPT-5.5に匹敵する性能を、約半額で提供する「日常使いの本命」。TerminalBench 2.1で87.4%とSolに肉薄しつつ、価格はSolの半分。多くの実務ワークロードはTerraで十分と位置づけられています。

向く用途:日常のコーディング・文章・エージェント

Sol
フラッグシップ(最高性能)

GPT-5.6ファミリーで最も賢いモデル。エージェント総合力・長時間タスク・セキュリティで最高水準。OpenAIによればコーディングでトークン効率が54%向上し、「より少ないトークンでフロンティア性能」を実現するとされます。

向く用途:複雑エージェント、長時間自律タスク

選び方の原則はシンプルです。まずTerraを既定にし、精度が足りなければSolに上げ、単価と速度が最優先ならLunaに下げる——この「Terra起点」の考え方が、コストと品質のバランスを取りやすくなります。

3. 価格体系——1つ下のTerraが要注目

モデル入力 / 1M tokens出力 / 1M tokens位置づけ
GPT-5.6 Sol$5.00$30.00最高性能
GPT-5.6 Terra$2.50$15.00Solの半額でGPT-5.5相当
GPT-5.6 Luna$1.00$6.00最安・最速

注目すべきは Terra の価格対性能です。OpenAIは「Terraは前世代GPT-5.5に匹敵する性能を、およそ半額で提供する」と説明しています。つまり、これまでSol(旧無印相当)が必要だった多くのタスクが、半分のコストで回せる可能性があります。

一方、Solの $5/$30 は Claude Opus 4.8($5/$25)と入力は同額、出力はやや高い水準です。フラッグシップ同士の単価は各社ほぼ横並びになりつつあり、差は「性能」と「トークン効率」で出る時代になっています。

4. ベンチマーク——Claudeとの直接比較

GPT-5.6 ベンチマーク(主要4項目)

Sol / Terra / Luna vs Claude Fable 5

Sol Terra Luna Claude Fable 5
TerminalBench 2.1(ターミナル操作)
88.8% ← 勝者
87.4%
86.0%
84.7%
SWE-Bench Pro(実プロダクション級コーディング)
80.0% ← 勝者
64.6%
Claude Fable 5 が明確に優位。Terra/Lunaの公表値なし
Agents' Last Exam(55分野の長時間実務)
53.6 ← 勝者
50.4
50.3
40.5
Artificial Analysis Coding Agent Index
80 ← 勝者
77.4
77.2
74.6

出典: Vellum「GPT-5.6 benchmarks explained」(OpenAI公開値・Artificial Analysis集計を整理)

ベンチマークSolTerraLunaClaude Fable 5
TerminalBench 2.188.8%87.4%84.7%86.0%
SWE-Bench Pro64.6%80.0%
Agents' Last Exam53.650.450.340.5
Coding Agent Index8077.474.677.2
MRCR 長文リコール91.5%89.6%41.3%

結論:エージェントは強い、実プロダクション級コーディングはClaudeが上

GPT-5.6 Solは、エージェント総合力(Agents' Last Exam)とコーディングエージェント指標で首位に立ちました。TerminalBenchでもClaude Fable 5をわずかに上回ります。しかし SWE-Bench Pro(実際のリポジトリでの本番級バグ修正)ではClaude Fable 5の80.0%に対しSolは64.6% と、15ポイント以上の差で負けています。「エージェントとして自律的に動く力」と「実コードベースを正確に直す力」は別物、というのが率直な読み解きです。

また Lunaの長文リコール(MRCR)は41.3% とSol/Terraから大きく落ちます。100万トークンの窓は持っていても、Lunaで超長文を精密に扱うのは不向きです。長文はTerra以上を選びましょう。

5. 何が新しいか——5つの主要ポイント

① 2段構成から3モデル体制へ

最大の変更点。旧来の「無印+高価なPro」から、Luna / Terra / Sol の3段に再編されました。特にTerraは「GPT-5.5相当を半額で」という価格対性能で、コスト設計の主役になります。

② トークン効率の改善(コーディングで54%)

OpenAIのサム・アルトマンCEOは、Solがコーディングタスクで54%トークン効率が向上したと述べています(CNBC)。同じ作業でも消費トークンが減れば、単価が同じでも総コストは下がります。単価表だけでなく「1タスクあたりの実コスト」で比較すべき理由がここにあります。

③ Programmatic Tool Calling(Responses API)

開発者向けの新機能として、モデルがJavaScriptを生成・実行してツール呼び出しをオーケストレーションする「Programmatic Tool Calling」がResponses APIに追加されました(Simon Willison氏の解説)。複数ツールを跨ぐ複雑なエージェントを、より少ない往復で実行できます。推論effortは none / low / medium / high / xhigh / max の6段階です。

④ ChatGPT Work・新デスクトップアプリ

GPT-5.6と同時に、業務向けエージェント 「ChatGPT Work」、Codexを同梱した新しいデスクトップアプリ、顧客向けのホスティングサービスも発表されました。ChatGPTを「単なるチャット」から「業務を実行するプラットフォーム」へ広げる動きです。

⑤ 音声モデル GPT-Live(全二重会話)

音声面では新シリーズ GPT-Live が登場。従来のターン制(話し終わってから応答)ではなく、全二重(フルデュプレックス)で人間のように割り込み・相づちができる会話を実現します。有料ユーザーは GPT-Live-1、無料ユーザーは GPT-Live-1 mini が提供されます。

6. ChatGPTプラン別・提供状況

プラン月額の目安GPT-5.6の利用モデル選択
Free$0△ ChatGPT Work / Codex内で Terra のみ不可(Terra固定)
Go$8/月△ ChatGPT Work / Codex内で Terra のみ不可(Terra固定)
Plus$20/月✅ Sol / Terra / Luna可(effortも設定可)
Pro$100〜$200/月✅ Sol / Terra / Luna可(effortも設定可)
Business$25/席〜✅ Sol / Terra / Luna可(effortも設定可)
Enterprise応相談✅ Sol / Terra / Luna可(effortも設定可)

Free / Go ユーザーも ChatGPT WorkやCodexの中では Terra を使える点が特徴です。ただしモデルを自由に選び分け、推論effortまで調整できるのは Plus以上。音声のGPT-Liveは無料でも mini 版が使えます。(プラン構成・価格は提供時点の各種報道に基づく。最新はChatGPT公式料金ページを確認してください)

7. Claude(Fable 5 / Opus 4.8)との比較

GPT-5.6 Sol vs Claude Fable 5 vs Claude Opus 4.8

フラッグシップ級の使い分け

GPT-5.6 Sol

2026年7月9日

価格 (入力/出力)
$5 / $30 per MTok
コンテキスト
1,050,000 tokens
強み
◎ エージェント総合力(首位)
◎ トークン効率・セキュリティ
◎ 3モデルで縦に選べる
弱み
△ SWE-Bench Proで大差負け
Claude Fable 5

Anthropic最上位級

価格 (入力/出力)
$10 / $50 per MTok
コンテキスト
1,000,000 tokens
強み
◎ SWE-Bench Pro 80.0%(首位)
◎ 実コードベースの正確な修正
◎ 長時間自律コーディング
弱み
△ 単価が高い
Claude Opus 4.8

コスパ重視の実務向け

価格 (入力/出力)
$5 / $25 per MTok
コンテキスト
1,000,000 tokens
強み
◎ Solより出力単価が安い
◎ 安全性・正確性
◎ コーディングの安定感
弱み
△ 最新エージェント総合力はSol優位

整理すると——「エージェントとして幅広く自律的に動かす」ならGPT-5.6 Sol「実際のコードベースを正確に直す・長時間コーディングさせる」ならClaude、という住み分けです。価格面ではClaude Opus 4.8($5/$25)がSol($5/$30)より出力単価が安く、コーディング品質も高いため、コーディング用途ではClaude勢のコスパが光ります。

8. 注意点——非公開ベンチとコーディングの弱点

① OpenAIが公開していないベンチマークがある

独立分析(Vellum)は、OpenAIが今回 SWE-bench Verified・GPQA Diamond・AIME・MMLU・ARC-AGI-2・FrontierMath を公表していないと指摘しています。エージェント系の指標が中心で、汎用推論・数学の直接比較値が出ていない点は、評価時に留意すべきです。良い数字だけが並んでいる可能性を差し引いて読む必要があります。

② 実プロダクション級コーディングはSolでも弱い

前述の通り、SWE-Bench ProではSol 64.6%に対しClaude Fable 5が80.0%。本番リポジトリのバグ修正やPR作成が主目的なら、GPT-5.6よりClaudeを検討する価値があります。

③ Lunaの長文処理は苦手

Lunaは安くて速い反面、長文リコール(MRCR)が41.3%と大幅に低い。長い仕様書・ログ・コードベースをLunaに丸ごと渡すのは避け、長文はTerra以上に任せましょう。

④ 知識カットオフは2026年2月16日

それ以降の出来事は学習されていません。最新情報が要るタスクはWeb検索ツールの併用が前提です。

9. 用途別おすすめ——どのモデルを選ぶか

✅ GPT-5.6 Terra を選ぶ
  • 日常のコーディング・文章・要約
  • コストと品質のバランス重視
  • 「まず既定で使う」1台
✅ GPT-5.6 Sol を選ぶ
  • 複雑な自律エージェント運用
  • 長時間タスク・セキュリティ業務
  • 精度がコストより重要な場面
✅ GPT-5.6 Luna を選ぶ
  • 高頻度・低単価の大量処理
  • 分類・抽出・短いチャット
  • 短文中心(長文は避ける)
✅ Claude を選ぶ
  • 本番リポジトリのバグ修正・PR
  • 長時間の自律コーディング
  • 正確性・安全性が最優先

FAQ

Q1. GPT-5.6はいつから使えますか?

2026年7月9日に一般提供が始まりました(限定プレビューは6月26日)。ChatGPT、ChatGPT Work、Codex、OpenAI APIで利用できます。

Q2. Luna / Terra / Sol はどう違いますか?

賢さ・速さ・価格の3軸で縦に並ぶモデルです。Luna=最安・最速、Terra=バランス(GPT-5.5相当を半額)、Sol=最高性能。コンテキスト(約100万トークン)と最大出力(128K)は3モデル共通です。まずTerraを既定にし、必要に応じてSol/Lunaへ動かすのがおすすめです。

Q3. 無料プランでもGPT-5.6を使えますか?

通常のチャットでは使えませんが、ChatGPT WorkやCodexの中では Free / Go でも Terra を利用できます。モデルを自由に選び分けたり推論effortを調整したりするにはPlus($20/月)以上が必要です。音声のGPT-Liveは無料でも mini 版が使えます。

Q4. GPT-5.6とClaude、コーディングはどちらが強いですか?

指標によります。ターミナル操作(TerminalBench 2.1)ではSol 88.8%がClaude Fable 5の86.0%をわずかに上回りますが、実プロダクション級の SWE-Bench ProではClaude Fable 5が80.0%、Sol 64.6%とClaudeが大きく優位です。本番リポジトリのバグ修正が主目的ならClaude、幅広い自律エージェントならSol、と使い分けるのが現実的です。

Q5. 価格はどうなっていますか?

1Mトークンあたり、Sol $5/$30、Terra $2.50/$15、Luna $1/$6(入力/出力)です。Terraは前世代GPT-5.5相当の性能を約半額で提供する位置づけで、コスト設計の主役になります。

Q6. コンテキストウィンドウと知識カットオフは?

3モデルとも約100万トークン(1,050,000)のコンテキストと128Kの最大出力を持ちます。知識カットオフは2026年2月16日です。

Q7. 開発者向けの新機能はありますか?

Responses APIに Programmatic Tool Calling(モデルがJavaScriptを生成してツール呼び出しを組み立てる機能)が追加されました。推論effortは none / low / medium / high / xhigh / max の6段階で制御できます。

Q8. GPT-Live とは何ですか?

GPT-5.6と同時に発表された新しい音声モデルシリーズです。ターン制ではなく 全二重(フルデュプレックス)で、割り込みや相づちを含む自然な会話ができます。有料はGPT-Live-1、無料はGPT-Live-1 miniが提供されます。

Q9. OpenAIが公開していないベンチマークはありますか?

はい。独立分析では、SWE-bench Verified・GPQA Diamond・AIME・MMLU・ARC-AGI-2・FrontierMathなどが今回公表されていないと指摘されています。エージェント系の指標が中心なので、汎用推論・数学の実力は別途評価する必要があります。

Q10. 既存のGPTアプリはそのまま動きますか?

APIは概ね互換で、モデルIDを切り替えれば移行できます。ただし3モデル体制になったため、どのタスクにLuna/Terra/Solを割り当てるかを設計し直すと、コストと品質を最適化できます。多くのケースはTerra起点が有効です。

まとめ:3モデル体制で「縦に選ぶ」時代へ

GPT-5.6は、単一の看板モデルではなく Luna / Terra / Sol の3段構成で登場しました。Solはエージェント総合力とコーディングエージェント指標で首位に立ち、Terraは「GPT-5.5相当を半額で」という価格対性能で実務の主役に、Lunaは大量処理のコスパ役に——と役割が明確です。

一方で、実プロダクション級コーディング(SWE-Bench Pro)ではClaudeに大きく負け、OpenAIが汎用推論・数学の直接比較値を公表していない点、Lunaの長文処理が弱い点など、無条件でベストとは言えない要素もあります。

2026年の賢い運用は、やはり 「タスクに応じてGPT-5.6の3モデルとClaudeを使い分ける」ことです。日常はTerra、複雑エージェントはSol、大量処理はLuna、本番コーディングはClaude——マルチモデル前提でコストと品質を最適化していきましょう。

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