第1章はメンタルモデルの話でした。この章は手を動かす話です。ゴールは1つ——あなたのリポジトリに対して、最初の指示を1つ通すところまで行きます。

打つコマンドは数行です。残りは「何を承認しているのか」を理解する時間に使います。ここを飛ばすと、後で必ず巻き戻すことになります。

入口は5つある ― どこから入るか

Claude Code は「ターミナルのツール」と紹介されがちですが、入口は5つあります。中身は同じで、包み方が違うだけです。

ターミナル

本体。claude と打つだけ。この講座の基準です。

VS Code 拡張

エディタの中に同居させる。差分をいつもの見た目で読める。

JetBrains 拡張

IntelliJ 系に入れる。そこで開発しているなら移動が要らない。

デスクトップアプリ

ターミナルを開かずに使う。モードは入力欄の横のセレクタで選ぶ。

ブラウザ(claude.ai)

手元に開発環境が無くても触れる。こちらもセレクタで切り替え。

最初の1時間はターミナルを勧めます。理由は快適さではなく情報量です。詰まったときのメッセージが素のまま見え、対処もターミナル前提で書かれています。なお、エディタ組み込み型(Cursor や GitHub Copilot)との住み分けは AIコーディング実践講座の第1章 にあります。

インストールする

標準は npm です。Node.js が入っていれば1行で終わります(node -v でバージョンが出れば準備完了)。-g は「どのフォルダからでも呼べるように入れる」という意味です。

ターミナル ― インストールと起動
npm install -g @anthropic-ai/claude-code claude

プロキシや地域制限で npm が弾かれる環境では、パッケージ管理側から入れられます。

ターミナル ― npm が通らないとき
brew install --cask claude-code # macOS / Homebrew winget install Anthropic.ClaudeCode # Windows / WinGet

入れ方は1つに決める。 npm の後に Homebrew でも入れると Multiple claude installations found が出ます。どちらが動いているか分からない状態は、この先の切り分けを全部難しくします。要件は環境で変わるので、迷ったら公式ドキュメントへ。

サインイン ― アカウントかAPIキーか

初回起動でログイン方法を選びます。Claudeアカウントで入ると、ブラウザが開き、サインインして許可すれば認証が通ります。使うのはプランの枠で、消費は上限とリセット時刻という形で現れます。APIキーは枠ではなく残高で動き、尽きると止まります。個人なら前者、CI や自動化は後者です。

どちらが使えるかは契約で違うので断定しません。覚えてほしいのは1点だけです。

環境変数のAPIキーは、サブスクリプションのログインより優先されます。 昔の検証で ANTHROPIC_API_KEY をシェルの設定に書いたまま忘れていると、正しくログインしてもそちらが無視されます。「契約しているのに残高不足と言われる」の大半はこれです。

今どの資格情報で動いているかは /status が答えます。疑う前に見る。

認証まわりの確認手順
/status # 今どの資格情報で動いているか env | grep ANTHROPIC # 環境変数にキーが残っていないか unset ANTHROPIC_API_KEY # 残っていたら外す。設定ファイルからも消す /login # 入り直して /status で再確認

最初の起動で何が起きるか

認証が済んだら、作業したいフォルダに移動してから起動します。Claude Code は「いまいるフォルダ」を作業対象と認識するので、間違えると無関係な場所を読み始めます。

ターミナル ― プロジェクトで起動
cd my-project claude

入力待ちの画面が対話の入り口です。ここでいきなり書き換えを頼まないことを勧めます。最初の1手は読み取りだけで終わる依頼——「READMEと主要なディレクトリを読んで、このプロジェクトが何をするものか説明して」。

理由は3つ。読み取りは既定でも確認を挟まないので承認の作法を知らずに通る。あなたはこのプロジェクトを知っているので答え合わせができる。そして接続・認証・作業フォルダを一度に検証できて、何も壊さない。おかしな挙動が出ても、書き換えに進む前に片付けられます。

指示→差分→承認のループ

読み取りが通ったら、小さな書き換えを頼みます。ここからは同じ4拍子です。

1. 頼む

日本語でそのまま伝える。どこを直すか言えるなら言う。

2. 集めて考える

関係しそうなファイルを探して読む。第1章のSTEP 1です。

3. 差分が出る

「ここをこう変えます」が行単位で出て、そこで止まる

4. 承認するか、断る

通せば反映。違えば断って何が違うかを言葉で足す

あなた: 「READMEに Windows の場合を足して」 ↓ [検索] README を探す ← 読み取り。止まらない ↓ [読取] README.md を読む ← 読み取り。止まらない ↓ [編集] README.md に3行追加 ← 差分が出て、止まる ↓ あなた: 承認する / 断って直しを伝える

断るのは失敗ではありません。差分を見てから具体的に言えるので、最初の指示で完璧を狙う必要がない——これがこの形の良さです。

1回の依頼は「差分を読み切れる大きさ」に。 依頼が大きいほど差分は長くなり、長い差分は読まずに承認されます。読まずに押した承認は、承認ではなく自動承認です。割り方は第3章で扱います。

最初はどのモードで始めるか

どこで止まるかを決めているのが権限モードです。ターミナルでは Shift+Tab、VS Code・デスクトップ・ブラウザでは入力欄の横のセレクタで切り替えます。

DEFAULT
許可を確認

読み取りは自動。編集とコマンド実行は毎回確認。初日はこれ。

ACCEPTEDITS
編集を承認

作業フォルダ内の編集を自動で通す。差分をあとでまとめて読む人向け。

PLAN
プランモード

調べるがソースは編集しない。計画を承認すると実行へ移る。

AUTO
自動モード

別の判定モデルが危険な操作だけ止め、残りは無確認で進む。条件あり

BYPASS
許可をバイパス

確認も安全チェックも無効。隔離環境専用。初日に触るものではありません。

Shift+Tab で循環するのは最初の3つです。自動モードは条件を満たすと循環に加わり、初回はオプトインの確認が出ます。許可をバイパスは専用のフラグで起動したときだけ有効。起動時から固定するなら claude --permission-mode plan と指定します。このほか、セレクタに出ない dontAsk(許可したものだけ実行)が設定・CLI専用で存在します。

初日の答えは「既定のまま」です。確認が出るたびに「これは読み取りか、書き込みか、実行か」を判別する練習になります。判別できてから緩める——逆だと、何を緩めたのか分からないまま緩めることになります。2つめはプランモードです。

どのモードでも守られる場所があります。 .git.claude・シェルの設定ファイルといった重要なパスへの書き込みは、許可をバイパス以外のすべてのモードで自動承認されません。「緩めたら全部が緩む」わけではありません。

各モードの詳細は権限モードの解説記事に、ツール単位で許可・拒否を書き分ける方法は権限ルールと設定の記事にあります。なお「確認が面倒」の答えはバイパスではありません。あれは誤操作にも、読み込んだ内容に仕込まれた指示にも防御を持ちません。減らすなら、まず信頼できる操作だけを許可するルールを書く。設計は第5章です。

CLAUDE.md ― 毎回言わずに済ませる

2日も使うと「同じ注意を毎回している」ことに気づきます。「このフォルダは触らない」「コミット前に lint を通して」——毎回打つのは時間もコンテキストも無駄です。そこでプロジェクトのルートに CLAUDE.md を置きます。Claude Code は起動時にこれを自動で読み、書かれた内容を前提に作業します。

CLAUDE.md ― 最初はこれで足りる
# このプロジェクト - TypeScript / Next.js。パッケージ管理は npm - 返答とコード内コメントは日本語 ## 触らない - src/legacy/ 以下(別チーム管理) - .env とその派生 ## 検証 - 変更後は npm run lint と npm test を通す - 型エラーが残ったまま完了と言わない

何を書くかは「AIには知りようがないこと」で決まります。

書く:検証の手順

どのコマンドで確かめるか。第1章のSTEP 3を成立させるので効き目が最大です。

書く:触らない場所と作法

生成物・他チームの領域・秘密が入るファイル。「新しいページはここ」などコードを見ても分からない決まり

書かない:一般論と長文

「読みやすいコードを書く」の類。守れたか判定できず、本当に守ってほしい行を薄めるだけ。

育て方も決まっています。最初は数行。同じ注意を2回したら1行足す。網羅的に書こうとすると長くて曖昧なファイルができ、守られなくなります。「守られていない」の原因は、たいてい多すぎる・抽象的すぎる・矛盾しているのどれかです。

権限ルールやモデルの選択は .claude/settings.json(プロジェクト)と ~/.claude/settings.json(個人)に分けて持てますが、初日は CLAUDE.md を数行書けば十分。使い分けは第6章です。

初日に一番よく壊れる3つ

詰まり方には偏りがあり、初日はほぼこの3つです。

command not found: claude

入ってはいるが呼べる場所に無い~/.local/bin(Windows は %USERPROFILE%\.local\bin)をPATHに足す。重複インストールが原因のことも。

認証したのに弾かれる

古い ANTHROPIC_API_KEY がサブスクを上書きしている定番。/status で確認し、環境変数を外してから入り直す

思ったより早く上限に当たる

Claude Code はチャットの10〜100倍のトークンを消費します。往復とファイル読み込みが積み上がるためです。

3つめには誤解があります。「サーバーが一時的にリクエストを制限しています」という趣旨のメッセージは、プランの枠ではなくサーバー側の一時的なスロットルで、少し待てば通ります。枠に当たったかどうかは /usage で区別できます。

原因が分からないときは、この順で
claude doctor # インストール・設定・MCP・コンテキストの総合診断 /status # 今どの認証で動いているか /context # 何がコンテキストを食っているかの内訳 claude update # 分からなければ最新版へ(これで直る不具合は多い)

最後の claude update は地味に効きます。版を上げるだけで消える不具合が相当あるので、調べ始める前に通せば存在しない問題を追わずに済みます。症状別の対処はよくあるエラーと対処の記事へ。切り分けの手順は第4章で扱います。

まとめ

  • 入口は5つ。中身は同じだが、最初の1時間は情報量の多いターミナルが有利
  • 標準は npm install -g @anthropic-ai/claude-code。通らなければ Homebrew / WinGet。入れ方は1つに絞る
  • サインインはアカウント(枠)APIキー(残高)環境変数のキーはサブスクを上書きする——迷ったら /status
  • 最初の1手は読み取りだけの依頼。接続・認証・作業フォルダを一度に検証でき、何も壊さない
  • 回すのは指示→差分→承認。依頼は差分を読み切れる大きさに割る。読まない承認は自動承認と同じ
  • 初日のモードは既定(許可を確認)、2つめはプランモード.git などの保護パスはバイパス以外で常に守られる
  • CLAUDE.md はルートに数行から。検証の手順・触らない場所・この場所の作法を書き、一般論は書かない
  • 初日の詰まりはPATH・環境変数のキー・使用量。初手は claude doctor / /status / /context

最初の指示が通ったら、次は毎日の作業に載せる番です。次の 第3章「日々のワークフロー」 へ進みましょう。