Claude Code は、ターミナルに常駐して、あなたのリポジトリを直接読み書きするAIです。ブラウザのチャット欄にコードを貼り付けて、返ってきたものをコピーして戻す——あの往復が無くなります。
この章では、以降の6章すべての土台になるメンタルモデルを作ります。ここを飛ばすと、後の章の「なぜそう設計されているのか」が腑に落ちません。
まず立ち位置 ― どこで動く道具なのか
AIにコードを書かせる道具は、動く場所で3つに分かれます。Claude Code は1つ目です。
ターミナルで動き、ファイルを直接触る。Claude Code、Codex CLI など。まとまった作業を任せるのが得意。
エディタに組み込まれ、書いている横で提案する。Cursor、GitHub Copilot など。見ながら書くのが得意。
ブラウザだけで完結し、そのまま公開できる。v0、Bolt、Lovable など。環境構築が要らないのが得意。
3タイプの比較そのものは AIコーディング実践講座の第1章 で扱っています。この講座は1つ目に絞って深く入ります。
なお Claude Code はターミナル専用ではありません。VS Code や JetBrains の拡張、デスクトップアプリ、ブラウザからも同じものを使えます。ただし設計思想はターミナル発で、そこを理解しておくと他の入口でも迷いません。
チャット型との決定的な違い
「ブラウザのClaudeでもコードは書けるのに、何が違うのか」——最初に必ず出る疑問です。違いは賢さではなく、手が届く範囲です。
あなたが貼ったものしか見えない。返すのはテキスト。適用するのはあなた。ファイルが10個に跨がると、10回貼って10回戻す。
自分で探して読む。返すのは差分。テストを走らせて、失敗すれば直してもう一度走らせる。10個のファイルは自分で見つける。
この違いが効いてくるのは、作業が「調べる」を含むときです。「この関数がどこから呼ばれているか調べて、全部直して」は、チャット型だとあなたが調べる必要があります。エージェント型は自分で検索します。
裏返すと、手が届く範囲が広いぶん、間違えたときの影響も広い。だから権限の設計が要ります(第5章)。「賢いから安全」ではありません。
エージェントループ ― 収集→実行→検証
Claude Code が動いているとき、内部では同じサイクルが回っています。
ファイルを探し、読み、必要なら検索する。ここで何を読ませるかが結果を左右します。
ファイルを書き換え、コマンドを走らせる。ここに権限のゲートが入ります。
テストや型チェックの出力を読む。失敗していればSTEP 1に戻る。
重要なのはSTEP 3があることです。チャット型は「たぶんこうです」で終わりますが、エージェント型は自分の出力を実行して確かめられます。テストが通るまで直し続けられるのは、このループがあるからです。
逆に言えば、検証できないタスクではこの強みが消えます。「このコードをきれいにして」は、何をもって成功かが決まっていないので、ループが空回りします。第3章で扱う「先に検証手段を渡す」という型は、ここから来ています。
ツールと権限 ― 何ができて、何を止められるか
Claude Code ができることは、与えられた「ツール」の範囲で決まります。ファイルを読む、書く、コマンドを実行する、検索する——それぞれが個別のツールです。
そしてツールを呼ぶたびに権限のチェックが入ります。既定では、ファイルの書き換えやコマンド実行のたびにあなたの承認を求めます。承認を省く設定もありますが、そこには第5章で扱う注意点があります。
あなた: 「認証まわりのテストを直して」
↓
[検索] 認証に関わるファイルを探す ← 読み取り。既定では確認不要
↓
[読取] auth.test.ts を読む ← 読み取り
↓
[編集] auth.test.ts を書き換える ← 書き込み。ここで確認が来る
↓
[実行] npm test を走らせる ← 実行。ここでも確認が来る
↓
失敗を読んで、もう一度 [編集] へ
この流れが見えていると、「なぜここで止まったのか」が分かります。止まったのは詰まったからではなく、権限のゲートに当たったからです。
コンテキストウィンドウという制約
Claude Code が一度に「覚えていられる」量には上限があります。これがコンテキストウィンドウです。会話が長引き、読んだファイルが増えるほど埋まっていきます。
埋まってくると、次の2つが起きます。
毎回大量の履歴を読み直すので、遅くなり、費用も増えます。第7章のコストの話に直結します。
最初に伝えた前提が押し出されます。「さっき言ったのに」の正体はたいていこれです。
対処は畳むこと——会話を要約して圧縮するか、区切って新しく始めるかです。いつ畳むべきかは判断が要るので、/compactは手動でやるべきかで基準を扱っています。手を動かす手順は第3章です。
向くタスク・向かないタスク
道具の輪郭は、不得意を知ると掴めます。
複数ファイルに跨る修正/既存コードの調査/テストを通すまでの反復/定型的な移行作業/エラーメッセージからの原因追跡
正解の定義が無い作業/実行して確かめられない領域/あなたしか知らない事業判断/1行で済む修正(承認の往復のほうが高くつく)
「向かない」側は、能力の問題ではなく検証ループが回らないという構造の問題です。だから賢いモデルに変えても解決しません。
この講座の地図
残り6章の位置づけです。順番に読むのが基本ですが、すでに詰まっている人は第4章から入っても構いません。
入れて、繋いで、最初の指示を通すまで。
探索→計画→実装→コミットの型に載せる。
症状から原因へ降りる切り分けの手順。
どこまで任せ、どこで止めるかを設計する。
CLAUDE.md・hooks・subagents・MCP の使い分け。
長く使い続けるための運用の勘所。
公式の学習サイトもあります。 Anthropic は無料の学習プラットフォーム Claude Academy を公開しており、Claude Code のコースも用意されています。当講座はそれを置き換えるものではなく、日本語での説明と、実際に詰まった事例からの逆算に寄せています。両方使うのが早いはずです。
まとめ
- Claude Code はターミナルで動き、リポジトリを直接読み書きするエージェント型のツール
- チャット型との差は賢さではなく手が届く範囲。自分で探し、差分を返し、実行して確かめる
- 内部は収集→実行→検証のループ。STEP 3があるので、テストが通るまで直し続けられる
- できることはツールの範囲で決まり、ツールを呼ぶたびに権限のゲートが入る
- コンテキストウィンドウが埋まると、鈍くなり、前半を忘れる。畳む判断が要る
- 向かないのは検証ループが回らないタスク。モデルを変えても解決しない
ここまでで、Claude Code が何をする道具なのかが掴めたはずです。次は実際に動かします。次の 第2章「導入と最初の1時間」 へ進みましょう。