Anthropic(Claude の開発元)は、2026年10月26日(米国時間)に、新規株式公開(IPO)のための登録届出書「Form S-1」を米国の証券取引委員会(SEC)に提出しました。上場先は米国の Nasdaq(ナスダック)で、ティッカーは「ANT」です。上場日・株数・価格の幅はまだ決まっていません。この記事では、Anthropic の発表と S-1 の原文で分かったこと、上場までの流れ、日本から買えるか、Claude の利用者への影響をまとめます。
投資の判断はご自身で行ってください。この記事は投資を勧めるものではなく、公式に発表された事実と手続きだけをまとめています。
Anthropic の上場——いまの状況
分かっていること
- 2026年10月26日に S-1 を SEC へ提出(公開)
- Nasdaq Global Select Market に「ANT」で上場を申請
- 売るのは Class A 普通株(1株1票)
- 目論見書の請求先は Goldman Sachs と Morgan Stanley
- 公募には米国のほか日本などでの公募も含む(S-1)
まだ決まっていないこと
- 上場日(売買が始まる日)
- 株数と価格の幅・公開価格
- 調達する金額
- 日本でどの証券会社が扱うか
- SEC の審査が終わる時期
確認日:2026年10月27日(日本時間)。出典は Anthropic の発表と SEC の EDGAR に公開された S-1 の原文。この記事は新しい情報が出るたびに更新し、末尾の「更新の記録」に日付と内容を残します。
1. ここまでの時系列
S-1 は突然出たものではなく、SEC には半年近く前から非公開の草案(DRS)が出ていました。EDGAR に残る提出の記録を、会社の発表と並べます。
- 2021年1月デラウェア州の公益法人(PBC)として設立S-1 の「Corporate Information」による。
- 2026年6月1日非公開の登録届出書の草案(DRS)を提出その後、7月13日・8月10日・9月4日・10月1日・10月9日に修正版(DRS/A)。EDGAR の提出一覧による。
- 2026年9月17日Class A と Class N の株式を10対1に分割S-1 の数字はこの分割を反映した値。
- 2026年10月18日公益のための基金(Anthropic Public Benefit Fund)を発表株式の5%を拠出すると発表(株主の承認が条件。Anthropic の発表)。S-1 にも同じ内容がある(2章)。
- 2026年10月26日S-1 を公開で提出し、Anthropic が発表EDGAR の受付番号 0001628280-26-067168。
- 日付は未定価格の幅の提示 → 価格の決定 → 上場3章の流れのとおり。Anthropic は日程を公表していない。
出典:SEC EDGAR の Anthropic, PBC の提出一覧(CIK 0002130357)、S-1。2026年10月27日確認。
2. S-1 で分かったこと
S-1 は、会社が投資家に向けて事業・財務・リスク・株式の仕組みを説明する書類(目論見書)を含みます。数百ページあり、株数や価格のようにまだ空欄の所も多くあります。ここでは、数字が埋まっている部分から読者の関心が高いものを選びました。数字はすべて S-1 の原文からで、報道の推計は使っていません。
売上は2023年から2025年で100倍を超える伸び
S-1 の「Summary Consolidated Financial and Other Data」では、年間の売上(12月期)が 2023年の4,100万ドルから、2025年に45億8,500万ドルになりました。2026年1〜6月の6か月だけで162億8,600万ドルで、2025年の同じ期間(11億6,300万ドル)の約14倍です。
赤字も大きく、2025年の純損失は419億6,500万ドル、2026年上期は807億4,800万ドルです。ただし、その大半は事業の費用ではありません。会社の評価額が上がったことで、転換社債などの「公正価値」が増え、その増加分が損失として計上されています(S-1 の注記)。事業そのものの赤字(営業損失)は、2026年上期に6億9,300万ドルまで縮んでいます。
| 百万米ドル | 2024年 | 2025年 | 2025年上期 | 2026年上期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上 | 386 | 4,585 | 1,163 | 16,286 |
| 計算資源・基盤の費用 | 2,522 | 7,326 | 2,334 | 8,945 |
| 営業費用の合計 | 3,366 | 12,645 | 3,298 | 16,979 |
| 営業損失 | (2,980) | (8,060) | (2,135) | (693) |
| 転換社債などの公正価値の変動 | (5,434) | (34,308) | (10,942) | (72,388) |
| 純損失 | (8,309) | (41,965) | (12,969) | (80,748) |
出典:S-1「Summary Consolidated Financial and Other Data」。( )は損失。2025年の営業費用には、著作権侵害の集団訴訟(Bartz 訴訟)の和解金15億ドルが含まれる(2025年9月に和解で合意、2026年7月に裁判所が承認)。2026年上期は、ほかに87億5,700万ドルの「その他の費用」がある。2026年6月30日時点の現金・現金同等物・短期投資は1,316億5,100万ドル。
顧客数・従業員数など、ほかの数字
直近12か月で Anthropic に10万ドル以上を払った顧客(組織単位)は、2026年9月30日時点で11,900を超えます。1年前(2025年9月30日)は950超でした。100万ドル以上は1,900超、1,000万ドル以上は約250です。S-1 は、10万ドル以上の顧客を「企業での利用」の指標として使うと説明しています。
従業員は約5,300人(2026年9月30日時点)。モデルの学習と提供には、AWS の Trainium、Google の TPU、NVIDIA と AMD の GPU を組み合わせて使っているとしています。
株式は5種類。公開で買えるのは Class A だけ
Anthropic の株の仕組みは、一般的な上場企業と大きく違います。S-1 自身が「novel(新しい)」と書いている構造で、公開で売られる Class A のほかに、議決権や役割の違う4種類の株があります。
出典:S-1 の表紙・「The Offering」・「Principal and Selling Stockholders」。
一般の議案(Class T 以外の取締役の選任など)の議決権は、次のように分かれます。Class A をどれだけ買っても、合計で49.9%を超えません。また S-1 は、LTBT が Class T で取締役会の過半数を選べるため、Anthropic は Nasdaq の基準でいう「controlled company(支配株主のいる会社)」にあたると書いています。
Class F は共同創業者7人の Founder LLC が持つ1株。取締役会の過半数は、これとは別に LTBT が Class T で選ぶ。
Anthropic はデラウェア州法の公益法人(Public Benefit Corporation、PBC)です。取締役は、株主の金銭的な利益だけでなく、会社の行動で大きな影響を受ける人々の利益と、定款に書いた公益の目的(「人類の長期的な利益のために、高度な AI を責任をもって開発し維持すること」)の釣り合いを取る義務があります。LTBT は、AI の安全・国家安全保障・公共政策などに詳しく、Anthropic と金銭的な利害の無い受託者による独立した組織として置かれています。
主な株主:Amazon と Google がそれぞれ5%超、議決権はなし
S-1 のリスク要因の節によると、優先株と転換社債の転換の後、Amazon と Google はそれぞれ発行済み株式の5%を超えて持ちます。どちらも議決権の無い Class N です。具体的な株数は空欄です。Amazon の転換社債は上場時に Class N に転換され、保有の上限を超える分は上場後に四半期ごとに転換されます。
議決権のある株では、共同創業者7人がそれぞれ約2億3,000万〜2億4,500万株の Class A を持っています(2026年9月30日時点。オプションなどを含む)。共同創業者たちは今回の公開で株を売り出す側(売出株主)にも名前があり、売る株数は空欄です。
また Anthropic は、Class N の8億4,684万960株(2026年6月30日時点の完全希薄化後の5%)を、完全子会社の公益基金(Anthropic Public Benefit Fund)に拠出しました。株価が前の節目から50%上がるたびに、取締役会の判断で最大2%を追加で出せる枠組みもあります(最初の節目は公開価格)。共同創業者は、個人の持ち分の80%を寄付に回すと誓約しています。
集めたお金の使い道
S-1 の「Use of Proceeds」は、使い道を「一般的な会社の目的」としています。運転資金、営業費用、計算資源と基盤への投資を含む設備投資、人材の採用と維持です。一部を買収や投資に使う可能性もありますが、重要な合意は現時点で無いとしています。ほかに、従業員の株式報酬(RSU)の決済に伴う税の支払いにも使います。調達額は空欄です。売出株主が売った分の代金は、会社には入りません。
リスク要因の要点
S-1 には100ページ近いリスク要因があります。「Risk Factors Summary」から、分野ごとに主なものをまとめます。
- 最先端のモデルを作り続けられないおそれ
- 計算資源を十分に確保・配分できないおそれ
- 少数のクラウド事業者に頼っている(出資者・顧客でもあり利益相反のおそれ)
- 競争が激しい
- 売上と売掛金が少数の顧客・販売経路に偏っている
- 歴史が浅く、直近の伸びは将来を示さない
- 悪用やガードレールの失敗
- モデルが意図しない・自律的なふるまいをするおそれ
- 規制と政治の不確実さ、訴訟
- Class A の持ち主は、支配権の移動を含む重要な決定に事実上影響を与えられないおそれ
- 議決権が LTBT と Founder LLC に集中
- PBC としての義務が業績と衝突しうる
3. 上場までの流れと、いまの位置
米国の IPO の手続きを、SEC の投資家向けサイト investor.gov の解説「Updated Investor Bulletin: Investing in an IPO」に沿って並べます。Anthropic はいま3番目にいます。
- 非公開の草案(DRS)を提出 済み2026年6月1日〜10月9日(修正を含む)。
- S-1 を公開で提出 済み2026年10月26日。EDGAR で誰でも読める。
- SEC の審査と修正 いまここSEC の職員が開示を審査し、目論見書が直されることが多い。修正版は「S-1/A」として EDGAR に出る。審査は内容の正しさや投資の良し悪しを保証するものではない。
- 価格の幅と株数の提示 未定いまの S-1 は「$ と $ の間」と空欄。埋まった版が出たら、この記事を更新する。
- 投資家の需要の聞き取り 未定引受会社が、登録の効力が生じる前に投資家から買いたい株数と価格(indications of interest)を集める。
- 登録の効力の発生と公開価格の決定 未定SEC が登録の効力を宣言すると、手続きを進められる。価格は引受会社の推薦をもとに会社が決める。
- 上場・売買の開始 未定Nasdaq で「ANT」の売買が始まる。最終の目論見書(424B4 など)に公開価格が載る。
出典:investor.gov(SEC)の Investor Bulletin(2022年10月14日)、Anthropic の発表、EDGAR。日程は Anthropic が公表していないため「未定」。
S-1 の発表は「登録の効力が生じるまで株は売れず、買付の申込も受けられない」と明記しています。いまの段階では、どこの証券会社でも ANT を買うことはできません。
4. 日本から買えるか
日本の読者向けに、2026年10月27日時点で分かっていることを整理します。S-1 には「日本での公募を含む」と書かれていますが、日本でどの証券会社が扱うかは、まだどこからも公式に発表されていません。
各社の公式ページを2026年10月27日に確認。各社の投資情報メディアには上場時期の観測を伝える記事もありますが、会社の公式の案内ではないため、ここでは扱いません。
SEC の解説によると、個人が IPO の株を手に入れる方法は2つです。1つは、IPO に参加する引受会社の顧客として公開価格で買う方法ですが、株の多くは機関投資家や富裕層に配られることが多いとしています。もう1つは、上場後に市場で買う方法で、個人投資家ではこちらが一般的だとしています。同じ解説は、上場直後の売買には価格が大きく動く危険があることも注意しています。
5. Claude の利用者への影響
2026年10月27日時点で、Anthropic は上場に伴う Claude の料金・プラン・利用規約の変更について何も発表していません。S-1 の発表文にも、利用者に向けた言及はありません。ニュースのページでも、S-1 の前後に利用者向けの変更の告知は出ていません。
S-1 から読み取れるのは、会社の目的と統治の仕組みが上場後も続くということです。公益法人としての目的は定款に書かれ、上場後も取締役会の過半数は LTBT が選びます。また S-1 は、上場後の重要な情報を SEC への提出書類、Anthropic のサイトの投資家向けページ、ブログ、公式の X アカウント(@AnthropicAI・@ClaudeAI)などで公表すると書いています。
料金やプランが今後変わったときは、プランの比較を「Claude vs ChatGPT 料金比較」で更新します。アカウントの規約については「ChatGPT・Claude のアカウントを BAN されないために」にまとめています。
6. これから何を見ればよいか
上場までの情報は、次の公式の場所に出ます。報道より先に、ここで確かめるのが確実です。
- SEC EDGAR:Anthropic, PBC の提出一覧。S-1/A(修正版)に価格の幅と株数が載り、上場後は最終の目論見書(424B4 など)に公開価格が載る
- Anthropic のニュース:anthropic.com/news
- 日本の証券会社:楽天証券の米国株式 IPO のページ、SBI証券の「IPOスピードキャッチ!」(ログイン後)、マネックス証券の最新情報など。取り扱いが決まれば各社が告知する
まとめ
- Anthropic は2026年10月26日に S-1 を SEC に提出した。Nasdaq で「ANT」、売るのは Class A 普通株
- 上場日・株数・価格の幅・調達額は未定。いまは SEC の審査の段階
- S-1 の売上は2025年に45億8,500万ドル、2026年上期は162億8,600万ドル。純損失の大半は転換社債などの公正価値の変動
- 株は5種類。Class A の議決権は合計49.9%まで。取締役会の過半数は LTBT が選ぶ。Amazon と Google はそれぞれ5%超(議決権なし)
- S-1 は日本での公募を含むと書くが、日本の証券会社の公式の案内は10月27日時点で無い
- Claude の利用者向けの変更は発表されていない
FAQ
Q. Anthropic の上場日はいつですか?
A. 2026年10月27日時点で未定です。S-1 を出した段階で、SEC の審査、価格の幅の提示、価格の決定が残っています。Anthropic は日程を公表していません。決まったら、この記事の「更新の記録」に追記します。
Q. 株価や時価総額はいくらになりますか?
A. 公開価格はまだ決まっておらず、S-1 の価格の幅も空欄です。このため、公式の数字はありません。この記事では予想や推計は扱いません。
Q. 上場は延期されたのですか?
A. 10月27日時点で、Anthropic から延期の発表はありません。もともと日程は公表されていないため、「延期」にあたる事実は確認できません。なお、楽天証券や SBI証券は一般論として、米国株の IPO の日程が変わる・延期になる場合があると案内しています。
Q. どこの市場に上場しますか?
A. 米国の Nasdaq Global Select Market です。ティッカー(銘柄の記号)は「ANT」。S-1 によると、日本など米国外で公募を行う国の取引所に上場する予定は、現時点でありません。
Q. 楽天証券や SBI証券で買えますか?
A. 10月27日時点で、両社とも Anthropic(ANT)の取り扱いの案内を出していません。SBI証券は、米国株の IPO 銘柄は上場前に個人が買えず、選定した銘柄を上場初日から売買できると説明しています。楽天証券は、選定した米国株の IPO でブックビルディングの申込を受け付ける仕組みがあります。どちらも、ANT が対象になるかは各社の発表を待つ必要があります。
更新の記録
この記事は、価格の幅・上場日・日本の証券会社の取り扱いなど、新しい公式の情報が出るたびに更新します。更新した日と内容をここに残します。
- 2026年10月27日初版。Anthropic の S-1 の提出(10月26日)を受けて、発表・S-1 の原文・SEC の解説・日本の証券会社3社の公式ページを確認して作成。