いよいよフェーズ3「作る」です。第2章で決めた仕様と、第3章で選んだ技術・ツールを手に、実際に動くものを組み上げていきます。ここでつまずく人の多くは、実は「コードが書けない」からではありません。一気に完成を目指してしまうから挫折するのです。この章では、AIを相棒に「小さく作って動かす」を高速で回す作り方を、入門・実践の両ルートで案内します。

この章で身につく「作り方」

目指すのは「一気に完成」ではなく「小さく前進」

回す作り方
「作る→動かす→直す」を小さく速く繰り返す習慣が身につく。
ルート別の実装
🌱会話で直す入門ルートと、🔧仕様を渡す実践ルート、それぞれの進め方。
AIを組み込む
アプリにAIを載せる選択肢(API・複数モデル・RAG)を選べるようになる。

実装の基本姿勢 ― 小さく回す

実装で最も大切な姿勢は、たった1つです。「小さく作って動かし、直す」を高速で繰り返すこと。頭の中にある完成形を一発で作ろうとせず、まず一番小さな「動く塊」を作り、それを少しずつ育てていきます。

なぜこれが効くのか。プログラムは動かして初めて、何が間違っているかがわかるからです。100行書いてから一度に動かすと、どこが原因かわからず途方に暮れます。10行書いて動かせば、間違いはその10行の中にしかありません。AIに書かせる場合もまったく同じで、小さく頼んで、すぐ確認する方が、結果的にずっと速く・確実に進みます。

😓 やりがちな失敗

「全機能を一気に作って」とAIに丸投げ。大量のコードが出てくるが、動かすとエラーだらけ。どこが原因かわからず、直す気力も失う。

🚀 うまくいくやり方

「まず一覧を表示する画面だけ」と1機能ずつ依頼。動いたら次、を積み重ねる。常に「動く状態」を保ったまま前進できる。

⚠️ AIのコードも間違える ― だから必ず自分で動かす。 AIが書いたコードは、それらしく見えても動かすとエラーだったり、意図と違う動きをすることがよくあります。「AIが書いたから正しいはず」は禁物。出てきたコードは必ず自分の手で動かして、目で確認する。これが個人開発で最初に身につけるべき鉄則です。動かさずに次へ進むと、間違いが積み重なって手に負えなくなります。

「作って動かして直す」ループの手順

この「小さく回す」を、具体的な4ステップにしたものが下の図です。1機能ぶんを、このループでぐるぐる回していきます。1周は数分〜数十分。速く回すほど上達します。

STEP 1
小さく頼む

「次はこの1機能だけ」とAIに具体的に依頼。範囲を絞るほど精度が上がる。

STEP 2
すぐ動かす

出てきたら即実行。ブラウザやターミナルで自分の目で結果を確かめる。

STEP 3
直す・整える

エラーや違和感があれば「ここをこう直して」と会話で修正。動くまで繰り返す。

STEP 4
保存して次へ

動いたら区切りとして保存(コミット)。良い状態を残し、次の機能へ。

💡 STEP 4「保存」を軽視しない。 機能が1つ動くたびに保存(Gitのコミット)しておくと、次の変更で壊れても直前の動く状態に戻せます。「昨日は動いていたのに」の悲劇を防ぐ命綱です。保存の具体的なやり方は次の第5章で詳しく扱います。

入門ルートと実践ルートの実装スタイル

「小さく回す」は共通の姿勢ですが、具体的な回し方はルートによって変わります。第1章で選んだ自分のルートに合わせて、進め方を確認しましょう。もちろん、途中で混ぜても乗り換えてもかまいません。

🌱 入門ルート ― 会話で形にする
コードは読まなくていい

バイブコーディングで、AIと会話しながらアプリを組み立てます。「一覧画面を作って」→「ボタンの色を青に」→「押したら保存されるように」と、日本語で頼んで、画面を見て、また頼む。この繰り返しが、そのまま「小さく回すループ」になります。

コツ: 一度に1つだけ頼む。うまくいかなければ「さっきの変更を戻して」と言えばよい。

🔧 実践ルート ― 仕様を渡して任せる
AIエディタで自動化する

Claude Codeなどに仕様書ごと渡して、まとまった実装を任せます。作業量に応じて工数(effort)を調整し、勝手にファイルを書き換えすぎないよう権限モードを使い分けて安全に自動化するのがポイントです。

コツ: 大きく任せても、確認は小さく。詰まったらエラー集で対処法を探す。

どちらのルートでも、忘れてはいけないのは「出てきたものを自分で動かして確かめる」という基本姿勢です。会話で作ろうが自動で作らせようが、確認するのは人間の仕事。この一手間を省かないことが、完成にたどり着くかどうかの分かれ道になります。

AI機能を組み込むなら

作っているものが「AIを使うアプリ」――たとえば文章を要約する、質問に答える、画像を判定する――なら、アプリの中からAIを呼び出す仕組みが必要です。ここは少しだけ専門的になりますが、選択肢は大きく3つに整理できます。自分のアプリに必要なものだけ選べば十分です。

① AIを呼び出す
まずはこれ

1つのAIモデルをアプリから使うだけならAI APIを呼ぶのが基本。「文章を送ると、AIの答えが返ってくる」窓口だと考えればOK。

② 複数モデルを扱う
切り替え・比較したいなら

複数のAIを状況で使い分けたいならVercel AI SDKで共通の書き方に統一。運用で一元管理するならLLMゲートウェイが便利。

③ 自前データで答える
独自の知識を持たせるなら

社内文書や自分の資料をもとに答えさせたいならRAG。AIに「あなた専用の資料」を渡して回答させる仕組みで、独自性を出せる。

🧭 迷ったら①だけでいい。 最初のMVPでは、1つのAI APIを呼ぶだけで十分なことがほとんどです。②③は「複数モデルを比べたい」「自前データで答えさせたい」という必要が出てから足せばOK。ここでも「小さく作る」が正解です。

詰まったときの動き方

実装中は、必ずどこかで詰まります。エラーが出る、思った動きにならない――これは失敗ではなく作っている証拠です。大事なのは、詰まったときにパニックにならず、順番に切り分けること。AIがいる今、詰まりは以前よりずっと早く抜けられます。

1. エラー文をそのままAIに渡す

赤い文字を丸ごとコピーして「このエラーが出た。原因と直し方は?」と聞く。エラー文が最大のヒント。自己流で書き換えず、まず貼る。

2. 小さく切り分ける

「どこまでは動いていたか」を思い出す。直前に変えた1か所が原因のことが大半。範囲を狭めれば原因は必ず見つかる。

3. 動く状態まで戻す

こじれたら、保存しておいた直前の動く状態に戻してやり直す。深追いより、いったん戻る方が速いことも多い。

🔧 実践ルートの人へ。 Claude Codeなどでよく出るエラーと対処はエラー集にまとまっています。同じエラーで悩むのは時間の無駄。詰まったらまず調べる、それでも駄目ならAIに聞くを習慣にしましょう。

この章のまとめ

フェーズ3「作る」の核心は、テクニックよりも「小さく作って動かして直す」を高速で回す姿勢にあります。一気に完成を目指さず、動く塊を少しずつ育てていきましょう。

この章のまとめ
  • 基本姿勢は「小さく作って動かす→直す」を高速で回す。一気に完成を目指さない。
  • AIのコードも間違える。出てきたものは必ず自分で動かして確認する。
  • 🌱入門はバイブコーディングで会話しながら、🔧実践は仕様を渡し工数権限モードで安全に自動化。
  • AIを載せるならAPIから。複数モデルはVercel AI SDK/LLMゲートウェイ、自前データはRAG
  • 詰まったらエラー文を渡す→小さく切り分ける→動く状態に戻すエラー集も活用。

動くものができたら、次はそれを安全に世へ出す番です。前の第3章「技術とツールを選ぶ」に戻って準備を見直すこともできますが、実装が回り始めたら、テストとセキュリティを固めて公開する第5章「テストして世に出す」へ進みましょう。