会議は、多くの職場で「時間を最も食う業務」のひとつです。準備でアジェンダを作り、当日はメモを取り、終わったら議事録を書き、関係者に共有し、決まったタスクを追いかける――この一連の流れには、実はAIに任せられる「作業」がたっぷり詰まっています。この章では、会議まわりのワークフロー全体を、準備から後始末までAIで軽くするやり方を、順を追って身につけます。前章のメール・チャット術で覚えた「頼み方」がそのまま活きます。
ゴールは「会議の前後の作業を、AIに下ごしらえさせる」
会議の「作業」をAIに任せる全体像
会議まわりを「ひとつの作業」と考えると重く見えますが、工程に分けると、それぞれにAIの出番があります。全体像を先に持っておくと、どこでAIを呼べばいいかが一目でわかります。人がやるべき「判断・発言・合意」はそのまま残し、その前後の準備と清書という「作業」をAIに寄せるのがこの章の考え方です。
アジェンダ作成、論点の整理、想定質問の洗い出しをAIに手伝わせる。
録音やオンライン会議の音声を、AIで自動的にテキストにする。
文字起こしから決定事項・ToDoを抽出し、要点を短くまとめる。
関係者へのお知らせ文やタスク一覧を作り、次の行動につなげる。
💡 全部を一度にやらなくてOK。 まずは一番つらい工程から。議事録書きが負担なら「文字起こし→議事録」だけ、準備に時間がかかるなら「アジェンダ作成」だけ。ひとつ楽になった実感が、次の工程を任せる後押しになります。
会議の準備 ― アジェンダと論点整理
良い会議は準備で決まります。とはいえ、毎回ゼロからアジェンダを組み立てるのは骨が折れます。ここでAIに「たたき台」を出させれば、あなたは白紙と向き合う代わりに、出てきた案を直すところから始められます。目的とテーマ、参加者、持ち時間を伝えるのがコツです。
「何を決める会議か」を伝えると、議題・時間配分・ゴールまで会議の設計図を提案してくれる。
扱うテーマを渡すと、論点・対立しそうな観点・抜けがちな視点を並べて整理してくれる。
提案内容を渡すと、参加者から出そうな厳しい質問や懸念を先回りで用意できる。
たとえば、新しい取り組みを提案する打ち合わせの準備なら、こんな一文で十分です。
来週、社内の関係者6名で「新しい問い合わせ対応フローの導入」を決める60分の会議をします。目的は導入の可否と担当・スケジュールを決めること。
①時間配分つきのアジェンダ案
②この場で出そうな懸念・反対意見を5つ
③それぞれへの答え方のヒント
を作ってください。
出てきた案は、あなたの職場の実情に合わせて取捨選択します。「もっと短く」「意思決定を前半に」と対話で調整すれば、当日の進行台本まで一気に整います。
文字起こし ― 録音・オンライン会議を文字に
議事録づくりで一番つらいのが、会議中の発言を書き取ることです。今は音声を自動でテキストに変換する「文字起こし」が実用レベルになり、この作業をほぼAIに任せられます。方法は大きく3通り。どれも「録音(または音声ファイル)→テキスト」という流れは同じです。
対面会議をICレコーダーやスマホで録音し、その音声ファイルを文字起こしツールにかける。もっとも汎用的な方法。
ビデオ会議ツールの録画機能で保存し、その音声・動画を文字起こしする。多くのツールに自動字幕・書き起こし機能が内蔵されている。
会議に「AI書記」が参加し、話している端から文字にする専用サービス。終了と同時にテキストが手元に届く。
ツールは種類が豊富で、日々増えています。特定の1本の手順にこだわる必要はありません。「自分が使うビデオ会議ツールに文字起こしがあるか」「手持ちの録音を渡せるサービスか」で選べば十分です。話者ごとに区別してくれるもの、多言語に強いものなど特徴もさまざま。選び方と代表的なツールは、下の記事にまとめてあります。
📎 手順を詳しく知りたいなら、AIで議事録・文字起こしを自動化する方法と、AIで動画・音声を文字起こし/字幕化するが実践的です。ツールの具体名と使い分けはこちらで。
⚠️ 録音とプライバシーは最優先。 会議を録音するときは、必ず出席者に録音の同意を取りましょう。黙って録るのはトラブルのもと。また、社外サービスに音声を渡す場合、機密情報や個人情報が含まれていないかを確認し、社内ルールに沿った使い方を守ってください。何を入力してよいかの基準はAIに入力してはいけない情報を参照。
議事録の自動生成 ― 決定事項とToDoを抽出
文字起こしができたら、次はそれを読める議事録に変える工程です。生の文字起こしは、言い間違いや脱線、相づちが混ざった長い会話ログにすぎません。ここでAIの本領が発揮されます。長文を渡して「決定事項・ToDo・担当・期限」を抜き出してと頼めば、要点だけの議事録に整えてくれます。
ポイントは、ほしい項目を具体的に指定すること。ただ「議事録にして」と言うより、下のように出力の形まで指示したほうが、そのまま使える結果になります。
以下は会議の文字起こしです。これをもとに議事録を作ってください。
■出力フォーマット
・会議の目的(1行)
・決定事項(箇条書き)
・ToDo(内容/担当/期限 を表形式で)
・保留・次回持ち越しの論点
雑談や脱線は省き、事実だけをまとめてください。担当や期限が発言から読み取れない場合は「未定」と書いてください。
【文字起こし】
(ここに文字起こしを貼り付け)
「担当や期限が読み取れなければ未定と書く」の一言が効きます。AIに勝手に埋めさせないことで、事実と推測が混ざるのを防げます。
⚠️ 議事録は必ず人の目で確認。 AIは決定事項を取り違えたり、言っていない期限を補ったりすることがあります(ハルシネーション)。数字・担当・期限・金額は、原文と突き合わせて確認してから共有しましょう。清書はAI、責任は人――この分担を崩さないことが肝心です。
要約 ― 長い記録を3行にする
議事録ができても、全員が全文を読むとは限りません。忙しい相手には「3行でわかる要約」が喜ばれます。AIは要約が得意ですが、コツは「どれくらいの長さ・粒度にするか」を指定すること。同じ議事録でも、上司向けの一言サマリーと、担当者向けの詳しめの箇条書きでは、ちょうどよい要約が違います。
「結論・次の一手・注意点」を1行ずつ。チャットで即共有する用。
論点ごとに5〜7項目。会議に出られなかった人のキャッチアップ用。
「良い点/課題/保留」など切り口を指定して整理させる。
この議事録を、2つの長さで要約してください。
①多忙な上司向け:3行。結論・次のアクション・懸念を1行ずつ、専門用語なしで。
②担当者向け:箇条書きで7項目まで。誰が何をいつまでにやるかが分かるように。
【議事録】
(ここに議事録を貼り付け)
要約は元の議事録・資料が長いほど価値が出ます。数十ページの資料を渡して「まず3行で全体像を教えて」と頼めば、読むべきか判断する時間が大幅に縮みます。
フォローアップ ― お知らせ文とタスク一覧
会議は「終わってから」が本番です。決まったことを関係者に伝え、タスクを動かして初めて成果になります。この後始末も、できた議事録を元手にAIに任せられます。議事録を渡して「これを元に共有メールを作って」「タスク一覧に組み直して」と頼むだけです。
議事録から出席者向けのお礼と要点連絡、欠席者向けの共有文を作らせる。宛先や口調も指定できる。
ToDoを担当・期限つきの一覧に組み直させる。表計算やタスク管理ツールに貼れる形式で出力させると便利。
この議事録をもとに、出席者と欠席者の両方に送る共有メールを作ってください。
・冒頭に3行の要約
・決定事項とToDo(担当・期限つき)
・次回会議の予定
丁寧だが読みやすい、簡潔な文体で。件名も提案してください。
前章で学んだメール術と地続きです。文体の調整や宛先ごとの書き分けは第2章「文章・メール・チャット」のコツがそのまま使えます。
💡 「準備→文字起こし→議事録→要約→共有」を一本の流れに。 一度この型を体で覚えると、会議のたびに同じプロンプトを使い回せます。よく使う指示はメモに保存しておき、毎回貼り付けるだけにすると、会議の後始末が数分で片づくようになります。
- 会議は準備→文字起こし→議事録→要約→共有の工程に分けると、各所にAIの出番がある。判断は人、作業はAI。
- 準備ではアジェンダ・論点・想定質問をAIに叩き台として出させる。目的と参加者・持ち時間を伝えるのがコツ。
- 文字起こしは録音/オンライン会議の録画/リアルタイム書記の3方式。特定ツールに固執せず、録音の同意と機密の扱いを最優先。
- 議事録は「決定事項・ToDo・担当・期限」を項目指定で抽出。要約は長さと粒度を指定。数字と担当は必ず人が確認。
- 最後は議事録から共有メールとタスク一覧まで作り、次の行動につなげる。
会議まわりの作業が軽くなったら、次は「伝える資料」そのものをAIで速く作る番です。次の第4章「資料・スライド作成」で、構成づくりからスライド化までのやり方を身につけましょう。