エージェントを本番で動かそうとすると、エージェントループ・ツール実行・サンドボックス・状態の保存を全部自分で用意しなければならない——その重荷をAnthropicが丸ごと肩代わりするのが Claude Managed Agents(マネージド・エージェント)だ。2026年4月8日にパブリックベータとして公開された、クラウドでホストされるエージェントを構築・デプロイするための合成可能なAPI群である。

本記事では、Managed Agentsとは何か・自前の Agent SDK との違い・永続メモリと“dreaming”・成果ベース評価とマルチエージェント・料金を、公式情報に基づいて整理する。先に要点。① 「自分でエージェントループを作る」代わりに、Claudeがファイル読取・コマンド実行・Web閲覧・コード実行を安全に行えるフルマネージド環境が手に入る。② ワークスペース単位の永続メモリ(/mnt/memory にマウント)を持ち、“dream”で整理・統合できる。③ 料金はトークン+セッション稼働時間 1時間あたり$0.08。

ANTHROPIC · MANAGED AGENTS

Anthropicが“動かす側”を丸ごと持つ

— ループ・サンドボックス・状態・メモリを管理インフラで提供

☁ MANAGED ENVIRONMENT(Anthropicが運用)
Agent loop + ツール実行
Sandbox file/bash/web/code
State 永続化・圧縮・キャッシュ
Memory store /mnt/memory
⟳ dream=メモリを整理・統合(重複を併合/古い値を更新)

あなたはエージェントの定義に集中。料金はトークン+稼働 1時間あたり $0.08(稼働中のみ・ミリ秒課金)。

1. Managed Agentsとは

Anthropicの説明では、Managed Agents は 「大規模にクラウドホスト型エージェントを構築・デプロイするための、合成可能なAPI群」であり、ドキュメントは 「管理インフラ上で動く、事前構築・設定可能なエージェントハーネス」と表現する。核心はこうだ:「自分でエージェントループ・ツール実行・ランタイムを作る代わりに、Claudeがファイル読取・コマンド実行・Web閲覧・コード実行を安全に行えるフルマネージド環境が手に入る」。プロンプトキャッシュ・コンテキスト圧縮・サンドボックス・状態の永続化が最初から組み込みだ。

構成は4つの概念——Agent(エージェント定義)/Environment(実行環境)/Session(セッション)/Events(イベント)。Environment は Anthropic管理のクラウドサンドボックスのほか、自社インフラ上の自己ホスト型サンドボックスも選べる。

Agent には、Anthropic 製のスキル(pptx・xlsx・docx・pdf)と、自社で作ってアップロードしたスキルを付けられる(1セッション最大500)。ツールは組み込みの一式と MCP サーバーのほか、自分のコードが実行する「カスタムツール」も定義できる。

ここでいう「ハーネス」は、エージェントのうちモデル以外の仕組み一式(ループ・ツール・記憶・安全装置など)を指す言葉だ。考え方そのものは ハーネスエンジニアリングとは で解説している。

2. Agent SDKとの違い(自前運用 vs マネージド)

混同しやすいのが Claude Agent SDK との違いだ。両者は「自前で動かす」か「Anthropicが動かす」かという軸で対になっている。

Agent SDK
= 自分で動かす(self-hosted)
  • Python/TypeScriptで自前のハーネス
  • ループ・ツール・ランタイムを自分で運用
  • インフラ・スケールも自分の責任
  • 細部まで自由に制御
Managed Agents
= Anthropicが動かす(managed)
  • ループ・サンドボックス・状態は管理側
  • 永続メモリ・dreaming が組み込み
  • 稼働時間ベースで課金($0.08/時)
  • 定義に集中、運用を任せる

つまり 「エンジンを自作したいなら Agent SDK、エンジンを借りて中身づくりに集中したいなら Managed Agents」。両者は競合ではなく、運用をどこまで自分で持つかの選択だ。エージェントの概念そのものは マルチエージェントとは、作り方は マルチエージェントの作り方も参照。

3. 永続メモリと“dreaming”

Managed Agents の特徴的な機能が永続メモリ(memory store)だ。これは 「ワークスペース単位のテキスト文書の集まり」で、セッションのサンドボックス内にディレクトリ(/mnt/memory/)としてマウントされる。エージェントは通常のファイル操作で読み書きでき、内容はセッションをまたいで持続する。変更ごとに不変のメモリ版(バージョン)が作られ監査可能だ。過去の版は書かれてから30日保持されるが、いま使われているメモリの最近の版は日数に関係なく残る(あまり書き換えないメモリは30日より前の履歴も持ちうる)。30日より長く履歴を残したいなら API で書き出す。上限はメモリ1件100kB・1ストア10,000件・1セッション8ストア。

開発者向けの注意として、メモリストアを操作する API は専用のベータヘッダ agent-memory-2026-07-22 を使う。managed-agents-2026-04-01 と併記すると 400 エラーになる(セッションにメモリストアを付ける操作は従来のヘッダのまま)。自己ホスト型サンドボックスでは常時つながったマウントではなく、作業用のプロセスが写しを持って同期する(memory のドキュメント)。

さらにユニークなのが “dreaming(夢を見る)”だ。公式の説明では、「dreamは、既存のメモリストアと過去のセッション記録を読み、再編成された新しいメモリストアを生成する——重複は併合し、古い・矛盾するエントリは最新の値に置き換え、新しい洞察を浮かび上がらせる」。これは非同期ジョブ(入力1〜100セッション、任意で指示文を付与)で、専用のベータヘッダ dreaming-2026-04-21 を要する(managed-agents-2026-04-01 だけでは dream のエンドポイントを使えない)。

dream を動かすモデルは作成時に指定する。dreams のドキュメントがリサーチプレビュー中の対応として挙げるのは Claude Opus 5.5・Claude Fable 5.1・Claude Opus 5・Claude Fable 5・Claude Opus 4.8・Claude Opus 4.7・Claude Sonnet 5.5・Claude Sonnet 5・Claude Sonnet 4.6 の9つだ(2026年10月12日確認)。一覧にない Haiku 系では dream を動かせない。dream の料金は、指定したモデルの標準のトークン単価で決まる。

⚠️ 正確さの注記:dreaming はリサーチプレビューでアクセス申請が必要。Anthropic の発表ブログ(2026年5月19日)は「スケジュールで回る処理」と書き、メモリを自動で更新させるか、変更を確かめてから反映するかを選べるとしている。一方、API ドキュメント上はあなたが作成して状態を確かめる非同期ジョブで、入力のメモリストアは書き換えず別の出力ストアを作る。気に入らなければ出力を捨てればよい。本記事では「Anthropicが常に自動で回す」とは断定しない。

4. 成果ベース評価とマルチエージェント

新機能として成果ベースの評価(outcomes-based grading)がある。公式いわく 「成功とは何かを記したルーブリックを書くと、エージェントはそれに向かって作業し、別の採点役が独自のコンテキストウィンドウで成果を基準に照らして評価する」。Anthropicは「標準的なプロンプトループより最大10ポイント、タスク成功率を改善した」と報告している(docxで+8.4%、pptxで+10.1%)。ただし、これらは Anthropic が発表ブログで「our internal benchmarks」と書く自社測定の値で、第三者による測定ではない。パブリックベータ。

マルチエージェント・オーケストレーションも組み込まれる:「リードエージェントが仕事を分割し、それぞれを独自のモデル・プロンプト・ツールを持つ専門エージェントに委任する」。共有ファイルシステム上で並列に動く。エージェントを束ねる設計思想は マルチエージェントの作り方と通じる。

いまは仕事の渡し方が3通りある(マルチエージェントのドキュメント)。①サブエージェントへの委任(委任は1段まで、子のスレッドは同時に最大25)。②dynamic workflows:エージェント自身が「複数のエージェントを走らせて結果をまとめるプログラム」を書き、サーバーが実行する(1回の実行で起動できるエージェントは最大1,000、1セッションで同時に開ける実行は既定で10)。③advisor:作業は自分で続けながら、計画や仕上げの確認の場面で、より上位のモデルに助言を求める(助言の分はそのモデルの単価で課金)。どれも動いた全エージェントのトークンがかかるので、セッションの金額の上限を付けておくのが公式の勧めだ。

5. 公開後に加わった機能

Managed Agents は2026年4月8日の公開後も、数週間おきに機能が足されている。日付は Anthropic の発表ブログによる(2026年10月の項目は Claude Platform のリリースノートによる)。

このほか、セッションごとの金額の上限(session budget)も設定できる。公開価格で使用量を積算し、上限に達すると新しいモデル呼び出しを止める。

6. 料金と利用条件

料金は2軸だ:①トークン(標準のモデル単価。プロンプトキャッシュ適用)+②セッション稼働時間 1時間あたり$0.08。稼働時間はミリ秒単位で計測され、ステータスが running の間だけ課金される(アイドルや再スケジュール中は無料)。公式の試算例では、入力5万・出力1万5千トークンを使う1時間のコーディングセッションで約$0.705。これは Claude Opus 5(入力$5・出力$25/100万トークン)の単価で計算した例だ(2026年9月時点の料金ページ)。

同じ条件を、2026年10月12日時点の料金ページの単価でモデルごとに計算し直すと次のとおり。右の列は、公式の2つ目の例と同じく入力のうち4万トークンがキャッシュの読み出しだった場合だ(キャッシュ読み出しは通常 入力単価の0.1倍。Opus 5.5 と Sonnet 5.5 は0.05倍)。

モデル(入力/出力、100万トークンあたり)入力5万・出力1.5万・稼働1時間うち4万がキャッシュ読み出し
Claude Opus 5($5/$25)※公式の例$0.705$0.525
Claude Opus 5.5($4/$20)$0.58$0.428
Claude Sonnet 5.5($2/$10)$0.33$0.254
Claude Haiku 4.5($1/$5)$0.205$0.169
Claude Haiku 5.5($0.10/$0.50)※1回の入力が10万トークンまで$0.0925$0.0889

どの行も稼働時間の $0.08 は同じで、差はトークン代から出る。安いモデルほど、費用に占める稼働時間の割合が大きくなる(Haiku 4.5 では約4割、Haiku 5.5 では約9割)。なお Haiku 5.5 は、1回のリクエストの入力が10万トークンを超えると高い単価(入力 $0.50・出力 $2.50)になる。文脈が長く積み上がるエージェントのセッションでは、この境目を超えやすい。

稼働時間だけの月額は、1日の稼働時間 × 30日 × $0.08 で出せる。数えるのはステータスが running の時間だけで、次の指示を待っている idle の時間は入らない。セッションを1日じゅう開いておいても、実際に動いた時間だけが課金される。

1日の稼働(running)稼働時間の月額(30日)参考:毎時間 上の条件のトークンを使うと(Sonnet 5.5)同(Opus 5.5)
1時間$2.40$9.90$17.40
4時間$9.60$39.60$69.60
8時間$19.20$79.20$139.20
24時間$57.60$237.60$417.60

右の2列は、1時間あたりのトークンが上の試算と同じ(入力5万・出力1.5万・キャッシュなし)と仮定した目安だ。実際のトークン量は仕事によって桁で変わるので、稼働時間の月額は下限の目安として読み、トークン代はセッションの金額の上限で抑えるのが確実だ。

項目内容
公開2026年4月8日・パブリックベータ(全APIアカウントで既定有効)
アクセスClaude Console/Platform CLI/Claude Code から
料金トークン+$0.08/セッション時間(稼働中のみ・ミリ秒課金)
Web検索セッション内の検索にも標準料金(1,000回あたり$10)
割引Batch API の割引は適用されない(セッションは状態を持つ対話型で、バッチモードが無い)
割増エージェントの model.inference_geo を "us" に固定するとトークンが1.1倍、model.speed を "fast" にすると fast モードの割増単価
注意状態を持つ設計のためゼロデータ保持(ZDR)やHIPAA BAAの対象外
メモリ/dreamdreaming はリサーチプレビュー(アクセス申請要)

7. 使い始める手順

公式クイックスタートの流れは4段階だ。すべてのリクエストにベータヘッダ managed-agents-2026-04-01 が要る(SDK は自動で付ける)。

  1. Agent を作る:モデル・システムプロンプト・ツール・MCP サーバー・スキルを定義する。組み込みのツール一式(bash・ファイル操作・Web 検索など)は agent_toolset_20260401 で有効になる。一度作れば ID で何度でも使い回せる。
  2. Environment を作る:どこで動かすかを決める。クラウドなら、事前に入れておくパッケージと、外部への通信を全部許すか(unrestricted)、許可したホストだけにするか(limited)を指定する。API で指定を省くと unrestricted になり、Console の作成画面は limited から始まる。公式は明示的に指定するよう求めている。2026年10月7日からは、limited の許可ホストが Web 検索・Web 取得のツールにも適用される。これらのツールで使うサイトは allowed_hosts に足す(足したホストはサンドボックスからも通信できるようになる)。
  3. Session を始める:Agent と Environment を指定して起動する。金額の上限(budget)もここで付けられる。
  4. イベントを送って結果を受け取る:ユーザーのメッセージをイベントとして送ると、Claude が自律的にツールを使い、結果を SSE(server-sent events)で返す。途中で追加の指示を送ったり、中断したりもできる。

Agent と Environment はファイルに書いて、CLI の ant apply で作ることもできる。Claude Code から始めるなら、最新版で /claude-api managed-agents-onboard を実行すると、対話しながら設定を進める案内が始まる(公式クイックスタート)。

8. 向いている仕事・向かない仕事

公式ドキュメントの「使いどころ」と料金ページの条件から、選び分けを表にした。

こんなとき選ぶもの
数分〜数時間かかり、ツールを何度も呼ぶ仕事を非同期で任せたいManaged Agents
週次のレポートなど、決まった周期で回したいManaged Agents の定期実行
コードや機密ファイルを社外のサンドボックスに出せないManaged Agents の自己ホスト型サンドボックス
ループを1手ずつ自分で制御したいMessages API で自前のループ、または Agent SDK
ゼロデータ保持(ZDR)や HIPAA BAA が必須Managed Agents は対象外なので、自前のループで組む
Batch API の割引で大量に安く処理したいManaged Agents では使えないので、Messages API の Batch を使う
Amazon Bedrock・Google Cloud 経由で使いたいBedrock と、Google が運営する版(従来の Vertex AI)では提供されていない
Anthropic が運営する Claude Platform on AWS では使える
Anthropic が運営する Google Cloud の版(2026年10月22日に一般提供)でも使えるが、MCP トンネルは使えない
2つの版の違いは「Vertex AIでClaudeを使う方法」で解説

まとめ

Claude Managed Agentsは、エージェントループ・ツール実行・サンドボックス・状態保存をAnthropicが丸ごと運用するフルマネージド環境だ。自前の Agent SDK が「自分でエンジンを動かす」のに対し、Managed Agents は「Anthropicが動かし、あなたは定義に集中する」——運用責任の置き場所が違う対の選択肢である。

特徴はワークスペース単位の永続メモリ(/mnt/memory にマウント、セッションを越えて持続)と、それを整理・統合する“dreaming”(リサーチプレビュー)。加えて成果ベース評価とマルチエージェント・オーケストレーションを備える。料金はトークン+稼働1時間あたり$0.08で、2026年4月のパブリックベータとして全APIアカウントで使える(状態を持つためZDR/HIPAA BAA対象外)。関連:Agent SDK入門、マルチエージェントとは、マルチエージェントの作り方。

FAQ

Q. Managed Agentsとは何ですか?
A. クラウドでホストされるエージェントを構築・デプロイするためのAnthropicのAPI群です。自分でエージェントループ・ツール実行・ランタイムを作る代わりに、Claudeがファイル読取・コマンド実行・Web閲覧・コード実行を安全に行えるフルマネージド環境が手に入ります。プロンプトキャッシュ・圧縮・サンドボックス・状態の永続化が組み込みで、2026年4月8日にパブリックベータとして公開されました。

Q. Agent SDKと何が違いますか?
A. 運用を誰が持つかが違います。Agent SDK は Python/TypeScriptで自前のハーネスを動かす(self-hosted)方式で、ループ・ツール・インフラを自分で運用します。Managed Agents は ループ・サンドボックス・状態・メモリをAnthropicが管理インフラで提供(managed)し、あなたはエージェントの定義に集中します。競合ではなく、運用をどこまで自分で持つかの選択です。

Q. 永続メモリと“dreaming”とは?
A. 永続メモリ(memory store)は、ワークスペース単位のテキスト文書の集まりで、サンドボックス内に /mnt/memory/ としてマウントされ、エージェントが通常のファイル操作で読み書きし、セッションをまたいで持続します。“dreaming”は、既存メモリと過去のセッション記録を読んで再編成した新しいメモリストアを生成する非同期ジョブで、重複を併合し、古い値を最新に更新し、新しい洞察を浮かび上がらせます。dreaming は現状リサーチプレビュー(アクセス申請要)です。

Q. 料金はいくらですか?
A. トークン料金+セッション稼働時間 1時間あたり$0.08の2軸です。稼働時間はミリ秒単位で計測され、ステータスが running の間だけ課金されます(アイドル・再スケジュール中は無料)。公式の試算では 入力5万・出力1万5千トークンを使う1時間のセッションで約$0.705です(Claude Opus 5 の単価で、トークン代$0.625+稼働時間$0.08)。同じ条件を2026年10月12日時点の単価で計算すると、Opus 5.5 なら $0.58、Sonnet 5.5 なら $0.33、Haiku 4.5 なら $0.205、Haiku 5.5 なら約 $0.09 です。稼働時間だけなら、1日8時間 running で月 $19.20(8×30×$0.08)です。トークンには標準のモデル単価とプロンプトキャッシュが適用されます。

Q. 誰でも使えますか?
A. 2026年4月8日のパブリックベータとして全APIアカウントで既定有効です。Claude Console/Platform CLI/Claude Code から利用できます。ただし状態を持つ設計のため、ゼロデータ保持(ZDR)やHIPAA BAAの対象外です。また dreaming はリサーチプレビューでアクセス申請が必要、といった機能ごとの段階差がある点に注意してください(最新は公式で確認を)。