作業中に Claude Desktop が突然固まり、開いていた Claude Code のセッションが全部まとめて死ぬ。強制終了して再起動すると、今度はアプリ自体が起動しなくなっていることがある——このとき、ログの最後の行にはたいてい同じ一文が残っている。

GPU process gone: { type: 'GPU', reason: 'crashed', exitCode: 101457950, serviceName: 'GPU' }

この記事は、その exitCode 101457950(=0x060C201E)が何を意味し、なぜ無関係なセッションまで道連れになるのか、そして現実に打てる手と打てない手を整理する。

⚠️ この記事の確度ラベル✅ 確認済み=公開されているissueに記録あり、または筆者環境で実測/🟡 報告ベース=複数の報告はあるが公式の確認なし/🔴 未確定=断定できない。Anthropicはこの症状について公式の原因説明も修正告知も出していない(2026年8月15日時点で確認した範囲)。

GPU PROCESS GONE · 0x060C201E

タブ1枚が、全セッションを道連れにする

— GPUプロセスはアプリに1個しかない共有資源だから

起きること
アプリが無応答になる。落ちるのではなく固まるので、強制終了するまで戻らない
巻き添え範囲
開いていた全セッション。無関係なプロジェクトも同時に止まる
分離できるか
できない。Electron/Chromiumの構造で、設定では変えられない
直し方
強制終了→再起動。起動しなくなっていたら[修復]

1. 結論——Claude Code の障害ではなく、器の障害

まず切り分けから入りたい。「Claude Code が落ちた」と感じても、落ちているのは Claude Code(CLI)ではない。落ちているのは、それを載せているデスクトップアプリ(Electron)の GPUプロセスである。

✅ 確認済み:判定は簡単で、%APPDATA%\Claude\logs\main.log の末尾を見ればよい。再起動の直前の行が GPU process gone なら本件だ。ログはそこで途切れ、次の行が Starting app になる。

そして重要なのは、失われるのはプロセスであってデータではない点だ。会話履歴とトランスクリプトはディスクに書かれているので、再起動後にセッションを開き直せば続きから読める。ただし実行中だった作業は別で、これは§6で改めて扱う。

2. 症状——「落ちる」ではなく「固まる」

この不具合のいちばん厄介なところは、アプリが消えずに無応答のまま残ることだ。クラッシュダイアログも出ないし、勝手に再起動もしない。ユーザーが気づいて強制終了するまで、ただ固まっている。

筆者環境(Windows 11 / RTX 2080 Ti / RAM 32GB)で 2026年8月14日に観測した3回では、GPUプロセスの死亡から強制終了までの最長が約30分だった。その間、開いていた8セッションはすべて停止したままだった。

3つの見分け方

  • 単発ではなく全滅——1つのセッションだけが止まったなら別原因。同じ分に複数のセッションが再起動していれば、アプリ本体が落ちている
  • ログが途中で切れる——正常終了なら終了処理の行が続く。本件は GPU process gone の直後で書き込みごと止まる
  • ダンプが無い——%APPDATA%\Claude\Crashpad\ にダンプが増えていなければ、CLI 側のネイティブクラッシュではない

3. なぜ無関係なセッションまで道連れになるのか

ここがこの不具合の本質で、設定でどうにかできる話ではない理由でもある。

Electron(Chromium)は、描画処理を GPUプロセスという専用プロセスに集約する。そしてこのプロセスは、アプリケーションにつき1個しか存在しない。全ウィンドウ・全タブ・全セッションがこれを共有している。

つまり、in-app ブラウザで開いたページ1枚が GPU プロセスを殺すと、そのページと縁もゆかりもないセッションが同時に巻き添えを食う。タブごと・セッションごとに分離されてはいない。✅ 確認済み:これは Chromium のプロセスモデルとして設計上そうなっているもので、ユーザー側の設定で分離することはできない

1個のGPUプロセスを、全部が共有している

セッションA
別プロジェクト
セッションB
別プロジェクト
セッションC
重いページを開く
↓ ↓ ↓
GPUプロセス(アプリに1個)
ここが死ぬと、上の全部が止まる

4. 引き金——in-app ブラウザが最多だが、唯一ではない

✅ 確認済み:公開されているissueで最も多い引き金は in-app ブラウザ(ブラウザペイン)である。#80444 は、ブラウザタブで開いたページが WebGL/WebGPU の機能検出を走らせた 15〜36秒後に GPU プロセスが死ぬ様子を、4回とも同じ 0x060C201E で記録している。

#82967 はさらに具体的で、引き金をブラウザツールのプレビュー用スクリーンショット取得capturePreviewScreenshotIfChanged)に特定している。#83478 は「更新され続けるプレビューを開いたまま」で再現すると報告している。

🟡 報告ベース:ただしブラウザだけが引き金ではない#68049 は ARM64 環境で起動時に同じ exitCode で落ちると報告しており、ブラウザ操作を伴わない。#83028 は Intel の内蔵GPUで再現するとしている。「ブラウザを使わなければ絶対に起きない」とは言えない。

💡 筆者環境での実測(一般化はできない):AIツールの調査で in-app ブラウザに4件のページを1〜2秒間隔で連続で開く操作を同日に約18回行い、うち3回で GPU プロセスが死んだ。毎回落ちるわけではなく、重いページの組み合わせが噛み合ったときだけ落ちている。これは1台での観測なので、頻度そのものは他環境に当てはめられない。

5. ログで確定させる

推測で終わらせず、3つのファイルを見れば確定できる。なお ~/.claude/logs というディレクトリは存在しないので注意してほしい。

見るもの パス 判定
アプリ本体%APPDATA%\Claude\logs\main.log再起動の直前の行GPU process gone なら本件
ブラウザ窓%APPDATA%\Claude\logs\unknown-window.log同時刻に CONTEXT_LOST_WEBGL があれば、描画側から見ても GPU が落ちている
ネイティブ落ち%APPDATA%\Claude\Crashpad\ダンプが増えていなければ CLI 側の障害ではない

⚠️ 同じログに出る requestAdapter の警告は、犯人ではない。The powerPreference option is currently ignored when calling requestAdapter() on Windows.」という行はクラッシュの兆候ではなく、Windows では powerPreference が効かないことを知らせる Chromium の通常メッセージである(Chrome for DevelopersChromium issue 40268366)。WebGPU を使うページを開けば落ちなくても出る。これが出ていること自体を根拠にしないこと。

exitCode で正常終了と区別できる。 同じ「終了」でも意味が違うので、追うべきものだけを追いたい。

exitCode 16進 意味
1014579500x060C201E本件のシグネチャ。追うべきもの
-10737412050xC000026Bログオフ/シャットダウン時。正常
10738073640x40010004意図的な終了。正常

6. 復旧——[修復]で戻る場合と、戻らない場合

強制終了して再起動すれば、たいていはそのまま使える。問題は、再起動しようとしてもアプリが起動しなくなっているケースだ。

✅ 確認済み:GPUクラッシュの後、Windows が MSIX パッケージを「変更されている」と判定し、起動を拒否することがある。#80444 はこれを appxState=2Modified)として記録し、設定 → アプリ → Claude → 詳細オプション → [修復] で毎回復旧できたと報告している。#81836 も同じく [修復] で戻るとしている。

ここから先が、この記事で最も実用的な部分だと思う。[修復]が効かない報告も存在する#82967 はパッケージの状態が Modified, NeedsRemediation まで進んでおり、[修復]は常に失敗し、完全な削除と再インストールでしか戻らなかったと報告している。

起動しなくなったときの順番

  1. 常駐プロセスを終わらせる——掴んだままだと[修復]が「起動中」で弾かれる
  2. [修復]——設定 → アプリ → インストール済みアプリ → Claude → 詳細オプション。データは保持される
  3. それでも駄目なら削除して再インストール(再ログインが必要になる)

手順の詳細と、会話履歴やセッションが消えるのかどうかは 「このアプリを開くことができません」の修復手順にまとめてある。

データについて。トランスクリプトはディスクに残るので、再起動後に読み直せる。ただし #81698 は「実行中だった作業を丸ごと失った。並列で走らせていたサブエージェントの結果も全部消えた」と報告している。保存済みのものは残るが、走っている最中のものは戻らない——ここは分けて理解しておきたい。

7. 打てる手と、打てない手

残念ながら根本的な回避策は無い。できるのは引き金を引きにくくすることだけで、しかも「効かないと報告されている手」も混ざっているので、そこを分けて書く。

◯ 打てる手
  • 重いページを in-app ブラウザで開かない。実ブラウザへ逃がす
  • ページを一度に何枚も開かない。間隔を空ける
  • プレビューを開きっぱなしにしない(#83478 の再現条件)
  • ブラウザ機能自体を切る——#82967 が挙げる回避。ただし止まるのはブラウザ起因のぶんだけで、起動時に落ちる系統(#68049)には効かない
  • 長い作業を1セッションに溜めない。復旧の読み直しが軽くなる
× 効かない・できない手
  • --disable-gpu は使えない——MSIX版では「アクセスが拒否されました」で弾かれる(#82967)
  • アプリの更新では直らない——筆者環境では更新後の版で再発した
  • GPUプロセスの分離——構造上できない(§3)
  • GPUスケジューリングやドライバ設定の変更——#82967 が複数試して効果なしと報告

🟡 報告ベース:ハイブリッドGPU(内蔵と外部を切り替える構成)を使っているなら、Windows の 設定 → システム → ディスプレイ → グラフィック で Claude に GPU の優先を固定するのは試す価値がある。根拠は Chromium 側にあって、Windows では powerPreference による GPU の指定が効かない——Chrome がまだ2つの GPU を使い分けて合成できないためで、Chromium issue 40268366 として追跡されている。つまりどちらの GPU で描くかをアプリ側から固定できないので、固定したければ OS の設定に頼るしかない。ただし本件で効いたという報告は見つかっていないので、期待しすぎないでほしい。

8. 混同しやすい別現象——ストア更新による強制終了

Microsoft Store(MSIX)版はアプリ自身の自動更新が無効化されている。代わりに、ストアが稼働中のアプリを強制終了して差し替える。作業中に突然アプリが消えるので、GPUクラッシュと取り違えやすい。

ログで明確に区別できる。 ストア更新のときは Windows session ending (close-app) という行が残り、GPU process gone は出ない。次の起動時にバージョンが変わっていれば確定である。

こちらは避けられないので、長時間の作業に入る前に更新を済ませておくのが唯一の緩和になる。

まとめ

  • 正体:Claude Code の障害ではなく、デスクトップアプリの GPU プロセスのクラッシュ(exitCode 101457950 / 0x060C201E
  • 全滅する理由:GPUプロセスはアプリに1個しかない共有資源。タブ1枚が全セッションを道連れにする。設定では分離できない
  • 引き金:in-app ブラウザが最多。ただし起動時のクラッシュ報告もあり、唯一ではない
  • 確定手順main.log の再起動直前の行を見る。GPU process gone なら本件
  • 復旧:強制終了→再起動。起動しなくなっていたら[修復]。[修復]が効かない段階まで進む報告もある
  • データ:保存済みは残るが、実行中だった作業は戻らない
  • 公式の修正告知は出ていない(2026年8月15日時点)

FAQ

Q. 会話履歴は消えますか?

A. 消えません。トランスクリプトはディスクに書かれているので、再起動後に開き直せば読めます。ただしクラッシュした瞬間に走っていた作業は失われます——並列で動かしていたサブエージェントの結果ごと消えたという報告があります(#81698)。

Q. アプリを更新すれば直りますか?

A. 直るとは限りません。 筆者環境では更新後の版でも同じシグネチャで再発しました。ただし#80444 は特定バージョンからの再発(regression)として報告しているので、版によって出やすさが変わる可能性はあります

Q. GPU のドライバを更新すれば直りますか?

A. 弱い手です。 ドライバ層が原因なら Windows のシステムログに TDR(イベントID 4101)が記録されますが、筆者環境では30日間で1件も出ていませんでした。#68049 も、ドライバ更新とクリーンな再インストールを経ても再発したと報告しています。

Q. メモリ不足やトランスクリプトの肥大化が原因ではないですか?

A. 筆者環境ではどちらも否定されました。クラッシュ時の Electron 全プロセス合計は約1.7GB、空きメモリは31.9GB中14.8GB。98.5MBまで育ったトランスクリプトを持つセッションもありましたが、落ちた時刻との相関はありませんでした。

Q. 1つのセッションだけが止まった場合も同じですか?

A. 違います。本件はアプリ本体が固まるので、必ず全滅型になります。 1つだけなら別原因を疑ってください。応答が途中で切れるだけなら Connection closed mid-responseresponse stalled mid-stream の系統です。